今年は卯年ですが…各区の小学校で飼育ウサギが減少傾向、なぜ?学校の動物飼育の現状は
 そもそもイマドキの小学校って、ウサギを飼っているのかな。今年の干支からふと気になり、東京23区の教育委員会に取材してみた。データは区によりまちまちだったが、9区が「減少傾向にある」と答えた。残る区の大半は飼育数そのものをカウントしていないことから「分からない」としており、東京の区部でも学校のウサギが減りつつある傾向がうかがえた。理由を聞いてみると、夏休みの餌やりなど先生たちの負担、子どもの動物アレルギー、感染症などさまざまな課題が寄せられた。(デジタル編集部・小寺香菜子)

◆警備員に委ねたり「ホームステイ」したり
 東急田園都市線の用賀駅からすぐ近く。世田谷区立京西小学校を訪ねると、校庭の片隅にあるウサギ小屋の小さな庭では、3羽のウサギ「きなこ」「ラムネ」「ショコラ」が元気そうに動き回っていた。
 小屋の掃除にいそしんでいた飼育委員長の丹下愛麗あいりさん(12)は「3匹とも元気いっぱい。もふもふです。昔は動物はあんまり好きじゃなかったけど、委員になって好きになった」と愛着ぶりを語ってくれた。同じく飼育委員の中岡怜永椛れえかさん(12)も「立って願い事をしているみたいなポーズをするのがかわいい」と夢中の様子だ。

 京西小では昨年7月、長く飼っていたウサギ「ココア」が老衰で亡くなった。「京西小のアイドル、いつまでも忘れないでね」「天国に行っても幸せにね」。児童たちは死を悼み、思い思いのメッセージを書き連ねた。「またウサギをかわいがりたい」という声も多く、学校は同年10月に動物愛護センターから現在の3羽を引き取って飼育を続けている。
 学校がある平日は、飼育委員の児童が餌やりや小屋の掃除を担当する。学校のない土日や夏休みなどは、かつては教員が学校に来たり家に持ち帰ったりして対応に追われていた。だが、最近は警備員に委ねたり飼育委員の家庭で「ホームステイ」したりと、教員の負担軽減に工夫を凝らしている。

 かつては自分も学校の飼育動物を持ち帰って世話をした経験があるという飼育委員担当主任教諭の苅野淳さん(34)は、「自分は動物が好きだから世話をしていたが、教員みんながみんな、そうではないと思う」とした上で、「第一にやらなきゃいけないことは児童の学力向上など。動物の世話で、そこに注力する時間が少なくなる可能性があり、そうなってはいけない。だからこそ、いろいろな人が関わって、愛情を持って飼育することが今後必要だと思う」と話す。
 ただ、京西小のように工夫して飼育を続けられる学校は区内では少数派になりつつある。区教委によると、2012年度には小学校42校で計88羽のウサギを飼っていたが、22年度は27校、40羽に。10年間で半減している。

◆板橋区は10年で53羽減 中央区は「ゼロ」
 本紙は東京23区の各教委に対し、区立小学校におけるウサギ飼育数の増減の数値や傾向について尋ねた。世田谷区を含めウサギ飼育数の増減データがあると答えた区は8区で、数値は以下の表の通り(始点と終点をクリックすれば数字が表れます)。

 増減の傾向については、まず増減データがある8区のうち品川区を除く7区は「減少傾向にある」と回答した。増減データがないのは15区で、うち中野区と江戸川区が「減少傾向にある」とした。残る13区は「分からない」と答えている。13区には中央、千代田、港の3区も含まれるが、いずれも22年度の飼育数が0~3羽と少なく、都心部の小学校でウサギが姿を消している様子もうかがえた。
 なぜ学校のウサギが少なくなっているのか。3年間で飼育数がほぼ半減した練馬区をはじめ複数の区が「長期休業中の世話など教職員の負担」を理由に挙げている。足立区は、ウサギに限らず生き物全般の飼育数が減っているとした上で「鳥インフルエンザが流行した時に『それ以上飼わない』となった」と振り返る。
 一方、世田谷区の担当者は「ウサギは暑さや寒さが苦手で、適切な飼育環境を維持することが難しい」としている。児童の動物アレルギーの影響を指摘する区も複数あった。
◆大学教授の調査でも減少傾向(略)
◆友だち思いやる気持ちにつながる(略)
◆「時代にそぐわない」「デメリット大きい」(略)

東京新聞 2023年2月14日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/229480