デイリー新潮2023年02月15日
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/02150557/

定めし朗報である。感染拡大防止の行動制限こそないが、専門家や医師会は「油断できない」と発信。マスクは外せず、大人数で集まるのがはばかられる日々が続く。そんな中、東京都医師会は大規模な忘年会を開催していた。

新型コロナもようやく、感染法上の位置付けが、季節性インフルエンザなどと同じ5類になることが決まったが、5月8日までは2類相当のままだ。まだまだ自粛ムードはやまず、東京商工リサーチの調査によれば、今年度も約7割の企業が、忘年会と新年会を自粛したという。

だが、実は、控える必要などなかったらしい。第8波が拡大中だと、一部では大騒ぎをしていた昨年12月21日、丸の内の皇居を望む一等地に建つパレスホテル東京に、300名近くを集めて年末懇親会、早い話が忘年会を行っていたのは、東京都医師会であった。やってもいいのだとアナウンスしてくれなかったとは、水臭いではないか。

■「コンパニオンも呼ばれた」
なにしろ、医師会自らの忘年会だから、どこまでやってもいいのか、よい目安になるはずなので、内容を確認しておいたほうがいい。宴会の工程表を見たパレスホテルの従業員が話す。

「12月21日の18時半から20時半で、会場は大宴会場の“葵”。広さ1160平方メートルです。来賓は小池百合子都知事のほか、日本医師会の松本吉郎会長、自民党の丸川珠代議員、公明党の山口那津男代表……ほかにも大勢の議員の名前がありました。19時15分から55分まではコンサートが開催され、会場にピアノとチェロ、バイオリンが運ばれていました。コンパニオンも呼ばれたようです」

ワクワクしてくるが、続きを聞こう。

「参加予定者は331人で、参加費は1人1万6千円。前菜、魚、肉、デザートのフルコースが出されたと思われ、ホテルが用意したお酒の料金は107万円。それ以外に、東京都医師会が独自に、各テーブルに全部で40本程度、1本2万3千円の赤ワインを用意していました」

そもそも、どのような趣旨の会なのだろうか。出席した医師会幹部が説明する。

「都知事や都議、日本医師会の会長もお呼びして、意見交換する会で、ここ数年はパレスホテルでやっています。2020年と21年はできませんでしたが、今回は参加者には抗原検査をしてもらい、陰性を確認して来てもらうということで開催したのです。抗原検査は100%じゃありませんが、直前に行えば、リスクをかなり下げられますから。ワクチンも4回以上接種してくださいと、アナウンスしていました」

どんな意見を交換するのだろうか。

「東京都医師会が1年間、社会活動や医療活動でお世話になった方々をお呼びし、感謝を伝えるとともに、意見交換をするということです。特に大事なのは地区医師会ですね。東京には47の地区医師会と12の大学医師会等、計60の医師会があり、そこの会長や理事の先生方のほか、公衆衛生や乳幼児保健などの委員会の委員の先生方も来ています」

■地区ごとに忘年会
それにしても、豪華な内容でうらやましいが。

「感染対策として、例年は800人くらい呼ぶところが、今回の参加者は270~280人程度。いつもは立食ですが、着席にしたため、お酌をしたり料理を運んだりする人が必要なので、コンパニオンを呼びました。ピアノ演奏は、音楽をやっているお医者さんに演奏してもらっただけです」

マスクはどうか。

「食事の席なのだから外していますよ。それに、年末懇親会は各地区医師会でもやっていました」

なんと、東京都医師会では、そこらじゅうで忘年会が行われていたという。

(中略)

■「開催を決断しました」
身内の利益のために本音を隠しているとしたら困ったものだが、お手本を示した以上、医師会も腹をくくったはずである。東京都医師会に尋ねると、

「今回は人数を制限し、着席スタイルで開催。席間の距離を十分に保ち、換気にも十分に配慮しました。また出席者全員に、抗原検査で陰性を確認のうえご来場いただくよう依頼しました。ピアノ五重奏は、ゆっくりと食事していただけるように実施しました」

そして、最後に加えた。

「さまざまなご意見があるのは承知していますが、本会として開催を決断しました」

決断にエールを送りたい。願わくは、自らの実践をお手本としてしっかりPRし、忘年会や新年会を自粛した企業にカツを入れてほしい。それができるのは、われらが医師会だけである。

「週刊新潮」2023年2月16日号 掲載
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