2022年10?12月期の実質国内総生産(GDP)は2・四半期ぶりのプラス成長となったが、伸びは小幅だ。力強さを欠く国内景気の先行きには、長引く物価高騰や海外経済の減速など懸念材料が立ちはだかる。(近藤統義)
◆インバウンドが牽引役に
 東京・羽田空港。国際線ターミナルに直結する複合施設「羽田エアポートガーデン」は外国人客の姿が目立つ。抹茶や扇子など「和」を強調したテナントが並び、先月末に全面開業したばかり。運営する住友不動産は「中国便の本格回復や新型コロナの5類引き下げが進めば、さらに集客が見込める」と期待する。
 プラス成長をけん引したのが、訪日客の復活だ。水際対策が大幅緩和された昨年10月から急増し、12月は前月の1.5倍となる137万人に上った。GDPの統計上、インバウンド消費がカウントされる「輸出」は前期比1.4%増。マイナスに作用する輸入は減り、外需がGDP全体を下支えした。
◆個人消費増の理由は物価上昇
 GDPの半分以上を占める個人消費は0.5%増で、コロナの流行「第8波」が重なったものの、3・四半期連続でプラスとなった。政府の全国旅行支援の効果などで宿泊や外食サービスが好調だったほか、自動車の購入も増えた。
 ただ、より生活に身近な飲食料品や衣服への支出は落ち込んだ。足元では4%を超えるインフレで、家計の負担感は増している。スーパー業界の関係者は「節約志向が強く、ついで買いがなくなっている。購入点数の減少を店頭価格の上昇がカバーしているのが実態だ」と話す。
◆電気代も…値上げラッシュは再びピークに
 今後も消費増への逆風は続きそうだ。食品の値上げラッシュは今月再びピークを迎え、春以降には電気代の値上げも予想される。政府や経団連が掲げる「物価高に負けない賃上げ」を、今年の春闘で実現するのは困難との見方は中小企業を中心に根強い。
 海外経済の悪化もリスク要因だ。輸出の動向に左右されやすい設備投資は今回、半導体関連の勢いが鈍化し0.5%減だった。米欧は金融引き締めの悪影響が本格化するとみられ、中国は不動産不況が続く。明治安田総合研究所の小玉祐一氏は「海外経済の不振が続けば、日本経済が回復基調を続けるのも厳しくなる」と指摘する。

東京新聞 2023年2月15日 06時00分
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