生活困窮者らで空室を埋めて賃貸物件を高値で転売する「新たな貧困ビジネス」が広がっているとして、困窮者支援に取り組む弁護士らが16日、厚生労働省に適切な対応を求める要請書を提出した。「困窮者が住宅穴埋めの駒のように利用されている」と注意を呼びかけている。
 支援団体関係者などでつくる「住宅穴埋め屋対策会議」によると、生活困窮者の支援を掲げる東京都内の一般社団法人が、困窮者を集めてマンションに入居させ、その後マンションが転売されていた事例を確認。2020年以降の新型コロナウイルス禍の影響で失業するなどして生活困窮者が増加したころから相談が寄せられるようになり、同法人関連の相談が約30件寄せられているという。
 入居率が高いマンションは転売時に高く売れるとされ、郊外の安い物件を取得して入居させ、利益を上げている可能性があるとみている。相談者はいずれも都心から遠い物件を紹介され、生活保護費を受給。家賃は保護費から支払っていた。一方、同法人が当初約束した就労支援サービスなどは受けられなかったという。
 同法人の他にも類似ケースがある可能性があるといい、記者会見した対策会議副代表の猪股正弁護士は「多額の転売利益が得られれば、事業が拡大する可能性がある。本来困窮している人を支えるための生活保護制度が悪用され、窮地に追いやられる人が増える」と警鐘を鳴らした。

 厚労省あての要請書では、実態調査や相談に対応する関係機関への支援などを求めている。
 同法人の紹介物件に入居し、その後退去させられた男性(62)は16日、不当な扱いを受けたなどとして、同法人に220万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。本紙は、同法人にメールフォームや電話で問い合わせたが、回答がなかった。 (山下葉月)

東京新聞 2023年2月17日 06時00分
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