実力社会になってきているとはいえ、日本ではまだまだ学歴社会が色濃く残っており、高卒と大卒ではいまだにもらえる収入に差があります。一方で、大学に行くにはそれなりのお金が必要です。

本記事では、大卒と高卒の生涯賃金の現状と、大卒の場合に追加で発生する費用を見たうえで、トータルでどれくらい異なるのかについて解説しています。

■大卒の方が生涯賃金は5000万円以上多い
生涯賃金とは、1人の労働者が生涯にわたって得る賃金の総額です。今回は独立行政法人労働政策研究所・研修機構が厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」を元に算出した生涯賃金を見ていきます。

男性が学校卒業後、フルタイムの正社員を60歳まで続けた場合の生涯賃金の平均は、高卒が2億1000万円、大卒が2億6000万円と、この時点で5000万円の差があります。

さらに、多くの企業では退職金が支給されます。そして、現在は60歳以降も働く場合が多々ありますが、退職金とその後、平均的な引退年齢まで非正社員で働き続けた場合の生涯賃金では、高卒が2億5000万円、大卒が3億3000万円と、その差は8000万円にも及びました。

つまり、単純に生涯で稼ぐお金は、大卒の方が高卒よりも5000万円~8000万円多いといえます。

■大学の入学費・授業料・その他かかる費用
大卒の方が生涯賃金はかなり多いとはいえ、大学に行くのにはお金がかかります。具体的に見ていきましょう。

国立大学については文部科学省の省令により授業料の標準額が定められており、年額53万5800円です。標準額の20%までの増額が認められているため、国立大学は60万円程度の授業料を提示できます。また、国立大学の入学料は、定めにより28万2000円です。

そのため、授業料が多くて60万円とすると、初年度は授業料と入学料は合計で88万2000円となります。そして、4年制大学であると考えると、2年~4年までの授業料の合計は60万円×3年間=180万円です。よって、国立の場合は授業料と入学料は合わせて268万2000円となります。

一方私立大学ですが、文部科学省が調査、公表している「私立大学等の令和3年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」を参照します。

授業料は平均で93万943円、入学料が24万5951円、施設設備費が18万186円です。よって、初年度は授業料と入学料、施設設備費の合計で135万7080円です。2年~4年までは授業料と施設設備費を合わせて111万1129円の3年分で333万3387円となり、初年度との合計で469万467円となります。

さらに、授業で使用するパソコンなどの備品代も数十万程度は必要となります。よって、備品代を高めの100万円とした場合、入学料や授業料などに係る費用はおおよそ350万円~550万円程度といえるでしょう。

ちなみに、1人暮らしの場合は家賃や光熱費、食費も必要です。家賃や光熱費、食費は地方でも10万円程度かかりますので、1年間で120万円、4年間では500万円ほどかかる計算です。

しかし、大学に行っても高卒で働いても、1人暮らしをするかどうかは人によります。そのため、「大卒と高卒のトータル費用でどちらが得か」という点においては考慮しないこととします。

■トータルの損得でいうと大卒の方が得
ここまでの情報を整理すると、大卒の方が高卒よりも授業料や入学料で350万円~550万円ほどの費用が発生するものの、生涯賃金は5000万円以上高くなることが分かりました。

大学に行くと一時的にお金がかかるものの、生涯ベースでみるとその後の収入増の方がはるかに大きいため、損得という点においては大卒の方が得と言えるのではないでしょうか。

■大卒の方が大きく生涯賃金は上だが、高卒の方が良い場合も
一般的には大卒の方が生涯賃金が高く、大学時代にかかった費用も取り戻すことができます。とはいえ、高卒で働くことが必ずしも損だということではありません。

高卒でも高収入の人はいますし、早い時期から自立ができる、若さを活かした働き方ができるなどのメリットがあります。学歴は関係なく、完全実力主義の企業では、高卒の方が長い間働けて有利な場合もあります。

あくまでも現時点での平均的な一般論だと捉えておきましょう。

出典
独立行政法人労働政策研究所・研修機構 ユースフル労働統計2022 ―労働統計加工指標集― 21 生涯賃金など生涯に関する指標
e-Gov法令検索 国立大学等の授業料その他の費用に関する省令
文部科学省 私立大学等の令和3年度入学者に係る学生納付金等調査結果について

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

ファイナンシャルフィールド編集部 2/17
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