自治体が運営するメガソーラー(大規模太陽光発電施設)で、送電用の銅線ケーブルが切断されて盗まれる事件が相次いでいる。ロシアによるウクライナ侵略などを受け、銅の買い取り価格は上昇しており、売却目的で盗まれたとみられる。自治体運営の施設は規模が公表され、どれくらいのケーブルが埋設されているか事前に把握しやすいことも、狙われる要因になっている。

価格高騰、売却目的か


山梨県北杜市で山林に一部を囲まれた市営「北杜サイト太陽光発電所」(出力1・86メガ・ワット、面積9・76ヘクタール)。昨年12月4、5日に連続して侵入され、地下に埋められたケーブル(延長約1500メートル)が切断されて盗まれた。年間約1億1000万円の売電収入があるが、全面復旧は今年8月以降の見通しで、市は失った収入は3000万円近くになると算定している。

同様の被害は各地で確認されている。千葉県香取市の市営発電所では昨年9月、ケーブル約3000メートル分が盗まれ、神奈川県相模原市にある県営の発電所でも同10月、約3000メートル分が持ち去られた。埼玉県でも今年1月、飯能市と三郷市にある下水処理施設に設置された発電所で相次ぎ被害が判明した。

自治体運営の太陽光発電所は設置や運営に公金が使われていることから、ホームページなどで詳細が公表され、ケーブルの埋設規模が推定可能だ。盗難に備えた防犯カメラやセンサーが設置されていない発電所もある。北杜市は「盗む側にとっては事前調査が容易だったのでは」とみている。

盗まれたケーブルは買い取り業者に売却されたとみられる。銅の価格は高騰しており、代表的な指標となるロンドンの金属取引所(LME)の価格(3か月先物)は今月17日で1トン当たり8987ドルと、2020年春頃の2倍前後に上昇している。銅価格が上昇する中で、山梨県内のある業者は「盗品のチェックが甘いまま、買い取る業者もいる」と指摘する。

各県警はグループによる犯行とみて捜査している。

読売新聞 2023/02/21 11:04
https://www.yomiuri.co.jp/national/20230221-OYT1T50002/