石をのけたら壺(つぼ)や鏡が現れた――。津市一志町小山の山中で、市立一志東小6年の伊藤瑚太郎さん(12)と、弟で3年の展梧(てんご)さん(9)が、土の中から壺などを発見した。市の調査で、12世紀(平安後期~鎌倉前期)の中世墓遺跡とみられる。現地調査した市教委の担当者は「銅鏡や刀など祭式の副葬品がセットで見つかるのは珍しい。当時の埋葬文化を考える上で貴重な資料」と偶然の発見をたたえた。

 瑚太郎さんは石集めが大好き。展梧さんは好奇心旺盛で、2020年8月には珍しい黒いトノサマバッタを捕獲し、毎日新聞が記事を掲載した。2人は22年1月、幼稚園の頃から通っている空手教室の指導者・吉田真典さん(42)に誘われ、自宅近くの小山城跡に向かった。


 尾根伝いに歩いて行く途中、石積みが目に留まった。石好きの瑚太郎さんが触ると少し動いたという。「あれっ」と思い、動かすと石が外れ、皿のような陶器が出てきた。「何かある!」と直感した3人は、車にスコップを取りに戻った。

 「土は少し硬かった」と瑚太郎さんは振り返る。慎重に掘り進めると大きな壺が姿を現した。持ち上げると、少し曲がった鏡と折れ曲がった刀が出てきた。「すごいモノかもしれない」。吉田さんは写真を撮り、壺を埋め戻した。壺から5メートルほど離れた場所では、展梧さんが石をのけたら、きれいな丸いものが出てきた。「和鏡」だった。

 事態が急転したのは5月。吉田さんが空手の大会で三重県埋蔵文化財センターに務める空手仲間に壺の写真を見せた。すぐに市教委に連絡が入り、土地の所有者に確認の上、発掘の手続きが始まった。調査した結果、中世の貴重な資料だと分かった。

 壺は形や文様から、平安~鎌倉にかけて渥美半島で作られた「渥美産四耳壺」(高さ約38センチ)とみられる。鏡は菊の花や鳥が描かれた「菊花双鳥鏡(きっかそうちょうきょう)」(直径約12センチ)で、人為的に曲げて納められたと考えられる。刀は鉄刀(全長40センチ)。展梧さんが見つけた和鏡は「萩双鳥鏡(はぎそうちょうきょう)」(直径約10センチ)と判明した。

 市教委によると、今回のように予想されていなかった場所から埋蔵物が見つかり、発見者の適切な対応によって散逸することなく文化財が守られたケースは、まれだ。今後、出土遺物の展示を検討する。2人は「見つけたときは、びっくりした。三重の歴史に役だったらうれしいな」と喜んだ。【下村恵美】

毎日新聞 2023/2/22 19:10(最終更新 2/22 19:10) 1011文字
https://mainichi.jp/articles/20230222/k00/00m/040/255000c