(前略)
そもそもアカデミーが避難学生を受け入れたことは当初“美談”として報じられた。

NHKは昨年4月4日、「前橋 ウクライナからの避難女性29歳 日本語学校で初授業 日本でアルバイト探しも」の記事を報じた。29歳のウクライナ人女性が知人を頼って前橋市に避難。すると《市内の日本語学校が避難してきた人たちの生活を支援しようと無償で受け入れることになった》と伝えた。無償という言葉が明記されていたことが分かる。

前橋市は13日、ウクライナからの避難民に対する支援策を発表し、翌14日、地元メディアが相次いで報じた。この稿では読売新聞・群馬県版「ウクライナ支援 避難者へ15万円 前橋市」の記事から引用しよう。

《生活費として1人当たり15万円の一時金を支給し、さらに生活費が必要な避難者には、最長で1年間、単身世帯で月に最大15万円を給付する》

さらに《市営住宅を無償で最大18部屋提供》するとし、興味深いことに日本語学校に通う場合にも《授業料など約30万円分を負担する》と報じられた。

前橋市が作成した資料によると、5月17日に清水理事長は前橋市長と面談したという。

「その際、清水理事長は『合計300人の避難民を受け入れたいので、市営住宅は3カ月スパンで入れ替えてほしい』と要望したのです。つまり、ウクライナ人の避難学生を受け入れ、30万円の補助金を受け取ると、3カ月後に市営住宅を出てもらう。そして新しい避難学生を受け入れると、再び30万円を手にするというプランです。30万円×300人で、合計9000万円の補助金受給を清水理事長は狙っていたフシがあるのです」(同・記者)

市長は面談の際、《市の支援については限りがあり、ビジネス的、機械的な対応をする考えには協力できない》と釘を指したことも記録に残っている。

前橋市は対応策を協議し、「300人の避難民の受け入れや市営住宅の入れ替え」はビジネス目的であり、「最大で9000万円をアカデミー側に支払うことは受け入れられない」との認識で一致した。その上で、「アカデミーが身元保証人として受け入れた避難民の補助金は10万円とする」ことを決定した。

■知事選に出馬
前橋市は5月30日、「補助金は10万円」とアカデミー側に説明。6月、アカデミー側は1人当たり10万円の補助金を申請してきたという。

「ところが9月ごろ、アカデミーは避難学生に『30万円を払え』との請求を開始したことが分かっています。前橋市が事態を把握したのは10月、避難民をアルバイトとして受け入れていた関係者が『6カ月無償だと説明されていた学費が、約3カ月で請求されているようだ』と相談してきたからです」(同・記者)

3カ月という期間も興味深い。清水理事長が「3カ月スパンで市営住宅を入れ替えてほしい」と要望していたことを想起させる。

補助金を減額されたため、アカデミーは避難学生に学費を請求した──こう考える前橋市民も少なくないだろう。

この清水理事長とは一体どのような人物なのかと言えば、群馬県知事を4期務めた清水一郎氏(1918~1991)の三男で、地元ではそれなりの知名度を持っているという。慶応大学文学部を卒業し、前橋市でホテルと日本語学校を経営している。

「清水理事長は選挙で変わった行動を繰り返したことでも知られています。1999年の知事選に出馬を表明しましたが、その2日後に突然の撤回。2007年の知事選には出馬するものの、選挙戦の最終日に『立候補を辞退したい』と発言して有権者を戸惑わせました。さらに、19年の県議選にも出馬し、『群馬廃県』、『前橋市と高崎市を合併して東京都に編入』といったユニークな公約を掲げました」(同・記者)

事態を把握した前橋市は昨年11月、アカデミー側と協議を行ったが、清水理事長は「市は30万円を支払え」という主張を繰り返すだけで全くの平行線に終わったという。

今回の騒動を受け、前橋市の文化国際課はコメントを発表している。全文を紹介しよう。

《市内日本語教育機関が身元保証人として受け入れる場合は、身元保証人の責務を考慮し、10万円を上限として補助することとしました。この点はニッポンアカデミー側にも説明をし、現に10万円の補助申請を6月以降に受付けています》
《このため本市としては補助制度をニッポンアカデミーが十分に理解しているものと考えていました。ところが、学生等からの苦情相談等の話が各所から入るようになった後、市に30万円補助金を支払えという主張に変わりました》
《どうしてこの様に主張が変わったかは市には理解できないものです。なお、6月に申請された補助金は現在のところ支給しておりません》(註:コメントは2月27日に受け取った)

デイリー新潮編集部2023年03月02日
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/03020600/