赤れんが造りで知られる東京駅と周囲の丸の内一帯が、新郎新婦がドレスやタキシードを着て写真撮影する「ウエディングフォト」の舞台として人気を集めている。皇居方面へと延びる行幸通りでは、多い日には20組のカップルがカメラに向かう日もあるという。記者(29)の周囲でも「東京駅で撮ったよ」という友人が何人も。確かに華やか、でも寒そう…。人気の理由を探った。(デジタル編集部・小寺香菜子)

フォトウエディングとウエディングフォト 前撮りやフォトウエディングのクチコミサイト「Photorait(フォトレイト)」を運営する「ウエディングパーク」(東京都港区)によると、フォトウエディングとは、結婚を迎えたカップルが結婚のセレモニーとして街中やフォトスタジオなどで撮影することを指す。ウエディングフォトは、フォトウエディングを含め結婚に伴う記念撮影全般のことを表す。結婚式などの前撮りや式本番の撮影なども含む。

◆「東京といえばここ」「めちゃめちゃロマンチック」
 ある平日の夕方。日が落ちて暗くなった行幸通りを歩くと、あっちにもこっちにもドレス姿のカップルが。数えてみると8組が、だいだい色の明かりに包まれた東京駅駅舎をバックに撮影していた。互いに映り込まないように距離を保ち、カメラマンの指示に応じてポーズを取る。コートを着込みカイロをポケットに忍ばせても身震いするほどの冷え込みだったが、ウエディングドレス姿の花嫁は寒がる様子もなく、こぼれるような笑顔で新郎とポーズを決めていた。
 今井諒太さん(27)、薫さん(27)夫妻=三鷹市=は、5月の挙式に向けて前撮りに臨んだ。撮った写真は電子データやアルバムとして受け取り、結婚式本番ではウエルカムスペースに飾る予定だ。費用は、ヘアメイクや貸衣装なども含め約20万円という。
 愛知県出身の諒太さんは「東京といえばここと思った。こういう機会でもないと、東京駅前を独り占めしたような写真は撮れない」とにっこり。薫さんは「めちゃめちゃロマンチックですね。結婚の思い出になりました。最高です」と声を弾ませた。
 2人が依頼した「スタジオゼロ東京店」では、年間250組が東京駅周辺で撮影しているという。取材しながらふと思い返してみれば、確かに記者の周りで最近結婚した4人のうち3人が、LINEで送信する招待状や式当日のプロフィルに、東京駅をバックにした写真を使っていた。
◆「インスタ映え」やコロナの影響も
 では、東京駅がそこまで人気を集めるのはなぜだろうか。
 「ウエディングパーク」社によると、東京駅近くでの撮影は2017年頃から増え始め、18年ごろから一気に広まった。写真共有アプリ「インスタグラム」が人気になったタイミングと重なる。
 一帯には、重要文化財にもなっている東京駅舎をはじめ、石壁や重厚な門が特徴の「明治安田生命ビル」、レトロな雰囲気の「三菱一号館美術館」、イルミネーションが輝く「丸の内仲通り」など都会的で外国のような写真が撮れるスポットが多くある。
 同社フォトレイト本部本部長の小林司忠かずのりさんは、人気の理由について「これだけいろいろな箇所で撮影できる場所は他にはなく、当時流行語にもなった『インスタ映え』の影響も大きかった」と分析する。

 人気のもう一つの大きな理由は「新型コロナウイルス」。流行が広がる前は、結婚式や披露宴でウエディングドレスを着用するケースが多いことから、前撮りの際に和装を選ぶカップルの割合が多かったという。
 ところがコロナ禍で人を集めて式や披露宴を開くことが困難になったため、撮影の時にドレスなどの洋装を着用する新郎新婦が増加。19年は、和装との併用も含め洋装での撮影を希望した人の割合は48%だったが、22年は70%に上った。小林さんは「クラシカルな街並みの東京駅周辺は『洋』が合うので、より選ばれやすくなっている」と話す。
◆ウエディングフォト自体も増加
 東京駅の撮影だけでなく、ウエディングフォト自体も増えている。同社の調査によると、21年度結婚したカップルのうち、フォトウエディング・前撮りの実施率は74.5%で、20年度から2.5ポイント増加した。「新型コロナの影響で結婚式が延期・規模縮小・中止になったため」を理由に挙げたのは15.9%だった。
 同社によると、東京駅周辺の他には、大階段がある上野の東京国立博物館や、四季の花が美しい国営昭和記念公園(立川市)、夜景が映える横浜のみなとみらいなども人気撮影スポットだという。
 一方、結婚情報誌「ゼクシィ」の日置香那子編集長は(略)

東京新聞 2023年3月3日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/232236