正社員のうち女性の賃金が男性より高い国内企業はわずか2%――。厚生労働省の「女性の活躍推進企業データベース」で男女の賃金差を公表している企業約1129社(6日時点)について毎日新聞が独自に分析した結果、こうした現状が明らかになった。平均すると女性の賃金水準は男性の76%だったことも判明した。勤続年数の差や管理職割合の低さが影響したとみられ、日本企業での男女の「賃金格差」が改めて浮き彫りになった。

 昨年7月の女性活躍推進法の省令改正により、従業員301人以上の企業は男女の賃金差を開示するよう義務付けられ、厚労省のホームページで毎日更新している。開示対象となっているのは、全従業員と正社員、非正規社員の3区分における男女の賃金差だ。各企業の事業年度が終了後、おおむね3カ月以内に公表するよう求めている。対象となるのは約1万8000社で、3月末決算が多いため夏までには対象の全企業で公表される見通し。


 毎日新聞が分析した1129社には、自主的に公表する従業員300人以下の企業も含めた。賃金差で1%未満の数値を記入した企業は誤りとみられるため除いた。男性の賃金を100%とした場合、女性の賃金が男性に比べて高かったのは、運輸業の「JALスカイエアポート沖縄」で133%、「阪神タクシー」は106%など、計23社あった。このうち7社は病院や社会福祉法人だった。阪神タクシーの担当者は「個々の仕事ぶりが給与に跳ね返る業界。女性の丁寧な仕事ぶりが賃金差に表れたのではないか」と説明する。

 雇用形態別にみると、女性の正社員は男性の76%、非正規だとやや差が縮まって84%だった。管理職のいない非正規のほうが賃金差は小さかった。全体だと71%に広がり、賃金の低い非正規に女性が多いことが影響したとみられる。


 有名企業で働く女性正社員の賃金水準を分析すると、飲料メーカー「キリンビバレッジ」で男性比の75%▽百貨店「大丸松坂屋百貨店」は同72%▽旅行代理店「日本旅行」が同71%――だった。飲食チェーン「あきんどスシロー」のように正社員では同78%だった一方、非正規では101%と上回るケースもあった。

 企業の規模別だと、従業員数が多い大企業のほうが賃金差が大きい傾向にある。従業員1001人以上の企業は男性比で67%だったが、101~300人では74%だった。大企業ほど男性の正社員数が多く、管理職も多数を占めているためだ。

 男女の賃金格差の実情に詳しいジャーナリストの浜田敬子さんは「性別役割分業の意識が影響している」と指摘する。日本の男性は欧米に比べて家事・育児時間が短く、短時間勤務をしている労働者の9割以上は女性といわれ、「『両立支援制度を充実させても、利用するのはいつも女性』という意識を企業側は変えないといけない。女性の管理職が少ないことを『女性のやる気の問題』で片付けていては解決しない」と訴える。【石田奈津子】

毎日新聞 2023/3/7 07:30(最終更新 3/7 08:05) 1209文字
https://mainichi.jp/articles/20230306/k00/00m/040/149000c