読売新聞2023/04/04 05:00
https://www.yomiuri.co.jp/national/20230403-OYT1T50214/

社会福祉法人「サンフェニックス」の資金流出問題で、厚生労働省は、同法人を所管していた広島県による監査などについて、「適切とは言いがたい対応があった」と指摘する検証結果をまとめた。県は「指摘を受け止め、改善を進める」としている。

投書や告発4度
 サンフェニックスでは2016年3月、医師で理事長だった楢崎幹雄被告(73)(業務上横領罪で起訴)と、後任の理事長となった佐藤裕紀被告(59)(同)が総額42億円で経営権を移転する契約を締結。その後、約30億円あった預金が流出するなどし、21年9月に民事再生手続きが適用された。

 同省によると、広島県には17年8月~18年5月、サンフェニックスと佐藤被告の会社との不透明な取引や、不自然な土地売買契約などを指摘する投書や告発が4度あり、県は18年9月に監査を実施した。

 県の運用では本来、監査の際に知事が委嘱した公認会計士を同行することになっていたが、会計士の日程が合わなかったため、連れて行かなかった。県は監査方針の検討時や監査結果の確定時にも会計士に相談せず、「文書で指摘すべき事項はない」と判断していた。

 検証結果では、会計士の同行を見合わせたため、当然追及すべき取引を追及できず、監査前後でその知見の活用もしていないと言及。「不適切事例の情報を得たら、厚労省などに相談して速やかに対応を検討し、問題の改善まで継続的に監査などを行う必要がある」と指摘した。

組織体制に課題
 検証結果は会計書類などのチェック不足も指摘した。

 社会福祉法人はガバナンス(組織統治)強化などのため、一定規模の収益や負債のある場合、社会福祉法などで会計監査人の設置が義務づけられている。

 サンフェニックスは経営破綻する約1年半前の20年3月末時点で約64億円の負債があり、設置対象の法人になっていたが、県の担当者は気づかなかった。

 同省は、担当課長が法人の届け出た書類の確認を担当者任せにするなど県の組織体制にも課題があったとした上で、「(書類の)形式的な確認にとどまり、財務状況などを把握できていなかった」と指摘。「大幅な金額変動に着目するなど、内容に踏み込んだ確認」をするよう求めた。

 同省は昨年以降、県への聞き取り調査を実施。今年3月17日付で検証結果を明らかにし、各自治体にも再発防止を呼びかけている。

 県は取材に「対応に不備や不適切な点があった」と認め、「会計士を含む専門家の知見を活用するなど既に対応を始めている。今後も改善すべきところは改善していく」と答えた。



 サンフェニックスは今月1日付で、スポンサー契約を結んでいた兵庫県の社会福祉法人「すみれ福祉会」に吸収合併された。特別養護老人ホームなどの各施設も同会が運営する。所管する自治体も兵庫県となった。