「自分に振り込まれている報酬なのに、自分で引き出すことができない」。ある消防団員の男性から、こんな訴えが情報提供窓口「つながる毎日新聞」に寄せられた。取材を進めると、団員手当として自治体から支払われる報酬が事実上、消防団に没収され、女性コンパニオンの接待付きの「研修旅行」などに使われていた。【金森崇之】

勝手に引き出される「給料」
 「これを見てください」。東京都東久留米市内の消防団に所属する男性が、自分の預金口座残高を確認できるスマートフォンのアプリを見せてくれた。

 2~3カ月ごとに東久留米市から数万円の入金があった記録がある。消防団の活動報酬だ。入金からしばらくすると、その全額がいつも同じ宛先に送金され、残高がほぼゼロに戻っていた。送金先は、男性が所属する消防団の口座だ。

 通帳も印鑑も消防団が管理している。男性は預金を引き出せず、送金もできない。「アプリだけは確認できるので、『ああ、また団に引き出されたんだな』と分かるんです」という。

 消防団員は非常勤特別職の地方公務員だ。団員には「報酬」(標準額は年間3万6500円)や、消火活動や訓練に参加するたびに数千円の「出動報酬」が支給される。原資は税金で、各市町村が支給額を定めているが、男性の消防団では団員は手にできない。

崩壊するモラル
 団員報酬を勝手に消防団の口座に送金する。なぜ、そんなことをする必要があるのか。男性は「個人の報酬を消防団の慰安旅行や飲み会に使っているんです」と証言する。

 毎日新聞が入手した東久留米市内の消防団の内部資料の中に、数年前に実施された「研修旅行」の明細書が残っている。首都圏に近い県への1泊2日の旅行で、参加者は十数人だが旅行代金は… (以下有料版で,残り2044文字)

毎日新聞 2023/4/8 07:00(最終更新 4/8 07:00
https://mainichi.jp/articles/20230407/k00/00m/040/167000c