【ベルリン時事】欧州の対中国戦略で足並みの乱れが目立っている。北京を訪問したドイツのベーアボック外相は14日、中国の秦剛国務委員兼外相と会談後、「台湾海峡の軍事的エスカレーションは、世界全体にとって恐ろしいシナリオだ」と懸念を表明。台湾問題の軽視とも受け止められる発言をしたフランスのマクロン大統領との対比が際立った。

 米中対立と距離を置き欧州独自の外交を目指す点で独仏は一致しているが、経済・貿易面などで中国の存在感が増す中、バランスを取るのに苦慮している現状が浮き彫りになった形だ。

 ドイツは先月、26年ぶりに閣僚が訪台するなど、メルケル前政権の融和的だった対中政策の見直しを図っている。ベーアボック氏は対中強硬派の急先鋒(せんぽう)で、報道によると、外相会談でも「(中国では)人権が制限されている」と批判した。
 一方、マクロン氏は先週の訪中時のインタビューで「(台湾問題で)欧州は米国に追従すべきでない」と述べ、批判が殺到。火消しに追われている。ただショルツ独首相も昨秋に中国の習近平国家主席と会談し、「陣営対立に反対だ」と米中の覇権争いとは一線を画す姿勢を示している。
 中国の立場に配慮するこうしたアプローチに対し、ロシアの脅威が身近に迫る欧州諸国は冷ややかだ。リトアニアのランズベルギス外相は12日、ツイッターで「米欧の団結の利点と必要性を認識するよう提案する。独裁者に欧州の平和を懇願することはお勧めしない」と独仏をけん制。軍事的な後ろ盾となる米国との関係強化を求めた。

時事通信 2023年04月15日07時13分
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