新たな生活は、初めからつまずいた。関東地方の少女(18)は2020年4月、高校の入学式に出席した。
「今までより明るい自分になろう」。そう誓った翌日から、休校になった。

 コロナ禍の始まりだった。元々人付き合いは苦手で、本音を明かせる友達はいない。高校では自分を変えたいと思っていた。
だが、学校が再開されてもマスクで同級生の表情がわからず、話しかけづらかった。

 みんなはSNSの話題で盛り上がるが、自分はやっていない。周囲の輪から外れて陰口をたたかれ、学校から足が遠のいた。
母子家庭で、家では精神的に不安定な母親から暴言を浴び続けた。逃げ場はなかった。

 「死にたい」。友人に相談できず、そんなことばかり考えた。今春、中退して通信制高校に編入した。
「コロナがなければ、違う高校生活が送れたのに……」

 21年度の小中学生の不登校は24万4940人、22年の小中高生の自殺は514人に上り、いずれも過去最多を更新した。
距離を求められる生活が続き、人間関係が作りづらくなったことが要因に挙げられる。

 外出制限で、自宅に引きこもりがちになった高齢者も多い。東京都北区の「豊島五丁目団地」で
学生とおしゃべりを楽しむ交流サロン。20人ほどいた参加者は半数程度に減っている。

 運営に携わる東洋大の山本美香教授(社会福祉学)は「感染を心配したり、自粛生活で心身が弱ったりして
来なくなった人が多い。多くの自治会が活動規模を縮小しており、孤立する高齢者はさらに増える恐れがある」と話す。

 コロナ禍で人とのつながりが希薄化し、孤独・孤立を深める人は増えた。政府が22年に行った調査では
1万1200人のうち「孤独感」があると回答した人は約40%に上った。20~50歳代の現役世代で、その割合が高かった。

 早稲田大の石田光規教授(社会学)は、対面での接触が制限されたことで、付き合う人に対し
知識や経済力といった「価値」を求める傾向が強まったと指摘。「人間関係をコストパフォーマンス(費用対効果)で
判断するようになり、付き合う相手の選別が進んだ」と話す。

 その結果、社交性がある人はSNSやオンラインで次々と新たな仲間とつながっていった。
一方、人付き合いが得意ではない人は、学校や職場といった日常生活での「緩いつながり」が断たれて孤立した。

続きはソース
ヨミドクター 2023年5月5日
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20230504-OYT1T50148/?catname=news-kaisetsu_news