毎日新聞
田中俊之・大妻女子大准教授
2023年5月9日
https://mainichi.jp/premier/politics/articles/20230508/pol/00m/010/004000c

 非正規雇用や貧困、孤立は女性や若者だけの問題なのか。男性学が専門の田中俊之・大妻女子大学准教授は、強者と思われている「おじさん」も強者というイメージに苦しめられ、孤立して負の感情を募らせていると言う。

 「おじさんたたき」をしても解決しないと言う田中氏に課題を聞いた。【聞き手・須藤孝】

 ◇ ◇ ◇

■「普通」になれない劣等感
 ――男性はこうあるべきだという社会のイメージと現実がずれてきていませんか。

 田中氏 現実とはかけ離れていますが、お父さん一人が働いていれば家族みんながご飯を食べられるというイメージが根強く残っています。男はフルタイム労働に従事して家族を養うものだという思い込みが強くあるなかで、そもそも家族を作れない男性が増えているのです。

 もちろんおカネも稼ぎ、育児もやり、スマートに時代に乗っているかっこいい男性もいます。その一方で仕事もない、家族もいない、まして子どもなんて、という男性は確実に増えています。

 「普通」は男はフルタイムで働いて「普通」に結婚して、「普通」は子どもを養うと思っているから、普通にさえなれない劣等感を持たざるを得なくなっています。

 負の感情がどんな暴発の仕方をするのかと思うと恐ろしい気もします。早急に処方箋を出さなければいけません。

居場所がない
 ――どうすればいいのでしょう。

 ◆彼らは単に恵まれていないだけではなく、居場所がない感じを抱いています。…

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