食卓に欠かせない「牛乳」に危機が迫っている。牛乳やチーズなどの原料となる生乳生産を行う「酪農業」の倒産や休廃業などが、2022年に合計14件発生した。前年(8件)から大幅に増加し、過去10年で過去最多を更新する急増となった。



酪農業では、過去に国産生乳不足に伴うバター不足などが度々発生した。そのため、政府は施設整備や機械導入を最大半額補助する「畜産クラスター事業」を開始するなど生乳増産を要請。酪農家もこれに応える形で乳牛増頭や牛舎拡大など積極的な設備投資を行い、規模を拡大してきた。しかし、増産体制が整った直後にコロナ禍が直撃し、業務用や学校給食用の牛乳消費が急減。コスト増分の価格転嫁も難しい状況が続いたなか、ロシアのウクライナ侵攻や円安による輸入コスト増でエサ代が前年から最大1.6倍まで高騰する「ダブルパンチ」に直面した。副収入の仔牛雄牛も外食需要減を背景に競り落とし価格が低迷し、コスト増を補うことも難しかった。



もともと高齢化や後継者不足、昨今の設備投資による借入負担も重なり「生産するだけ赤字」の状況に耐える経営体力がない事業者も多い。そのため、昨今の飼料高といった経営環境の急変を前に、倒産や休廃業の決断を余儀なくされたケースが急増したとみられる。



足元では政府による飼料代補助に加え、生乳出荷価格を段階的に引き上げるなど酪農業への支援が広がっている。ただ、消費者も物価高の影響を受けるなか、乳製品価格のさらなる上昇は一段の消費低迷も招きかねない。飼料高騰と値上げ難を前に酪農家が経営をあきらめる状況が続けば、国産牛乳が入手困難となる「酪農危機」が現実に起きる可能性も否定できない。

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PRTIMES 2023年5月10日 11時07分
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000655.000043465.html