【シドニー時事】先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)招待国のオーストラリア。防衛力拡充に加え、米英豪の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」や日米豪インドの枠組み「クアッド」などを通じ、中国への抑止力強化に努める。一方、経済面では最大の貿易相手国の中国が続ける豪産品輸入制限を早期に解除させたい考えで、綱渡りの対中政策を強いられている。
 「中国の軍拡は第2次世界大戦後、最も野心的だ。南シナ海を巡る中国の主張は国際秩序を脅かし、豪州の近隣でも戦略的競争に関与している」。豪政府は4月に公表した「国防戦略見直し」で中国への警戒感を強調。AUKUSの下で原子力潜水艦配備計画を進め、射程500キロ超のミサイルを導入することを柱に据えた。日米印やフィリピンなどと共同訓練も行う。
 豪政府はまた、太平洋島しょ国に今後5年間で計19億豪ドル(約1700億円)を投じ、海上警備能力向上やインフラ整備を支援する。中国がソロモン諸島と安保協定を結ぶなどして影響力拡大を図っているため、地域との関係強化を目指す。
 中国は、モリソン前豪政権が新型コロナウイルスの起源調査を求めたことなどに反発し、2020年5月から豪産の大麦、ワイン、牛肉などの輸入を制限。豪州は年間約200億豪ドル(1兆8000億円)の貿易収入を失った。産業界は日印、韓国、ベトナムなどで市場を開拓しているが、「消費規模の大きさで中国にかなわない」(穀物生産組合幹部)と対中輸出再開を切望する。
 ファレル貿易相は12日に北京で王文濤商務相に制限解除を直談判したが、具体的時期の言質を得られなかった。豪政府が最近、レアアース(希土類)開発への中国企業の増資を認めなかったことを中国側は不服としており、厳しい駆け引きが続くのは必至だ。
 「協力できる点は協力し、反対しなければならない点には反対する」。アルバニージー首相が掲げる是々非々の対中路線は難度を増している。

時事通信 2023年05月14日07時20分
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023051300314&g=int