ウクライナ危機や中国への対応を巡り世界の分断が進む中、開かれた今回の主要7カ国首脳会議(G7サミット)。グローバルサウスと呼ばれる新興国・途上国らも招いて結束拡大を図ったが、果たして成果は得られたのか。

 「建設的かつ安定的な関係を構築する用意がある」。今回のサミットでは、首脳宣言で中国に対してそう打ち出した。前年は中国の軍事的威圧や人権侵害を非難して対決色を前面に出したが、今回は協力できる分野では協力する「是々非々」の姿勢を強調した。

 そのキーワードが「デリスキング(リスク低減)」だ。宣言には、互いの経済関係を分離する「デカップリング(切り離し)にはならない。デリスキングが必要」と盛り込んだ。

 サミットでは、重要物資のサプライチェーン(供給網)の中国依存脱却や、中国が経済力を背景に貿易などを制限する「経済的威圧」への対応など経済安全保障の強化が主要議題となった。デリスキングは欧州で使われ始めた言葉で、経済安保の観点からリスクを管理し、他の分野では安定的な関係を維持しようとする戦略だ。

 軌道修正の背景には、ロシアのウクライナ侵攻に伴う物価高などで世界経済が不安定となる中、巨大な経済力を持つ中国はやはり無視できないことがある。

 ドイツやフランス、欧州連合(EU)の首脳らは2022年秋以降、相次いで訪中し経済協定を結ぶなど関係改善に動いている。欧州はもともと気候変動問題などで中国との協調を重視しており、「中国を切り離すことは実行不可能であり我々の利益にもならない」(フォンデアライエン欧州委員長)との立場だ。

 中国との経済関係を無視できないのは、米国も同様だ。バイデン政権はトランプ前政権の対中制裁関税を維持し、先端半導体の対中輸出規制も強化。補助金で先端半導体の工場を誘致するなど、重要物資の中国依存脱却を進めている。

 だが、22年の米中の貿易額は約6900億ドル(約95兆円)と過去最高を記録。新型コロナウイルス禍から中国経済の正常化が進む中、米企業も中国市場で一定の恩恵を受けており、完全なデカップリングは現実的でないのが実情だ。こうした状況を踏まえ、バイデン政権も「デカップリングは求めていない」(サリバン大統領補佐官)と表明するようになった。

 デリスキングには、…(以下有料版で,残り2325文字)

毎日新聞 2023/5/22 04:10(最終更新 5/22 04:10) 有料記事 3269文字
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