職場での評価や多様性の尊重を巡り、女性はストレスや不満を抱く傾向が40代以降に強まるとの結果が、職場のメンタルヘルスを支援する「ラフール」(東京)のアンケート調査で浮かび上がった。当事者の声を取材し対策を探った。(押川恵理子)
◆見合う給料も、ふさわしい評価も
 調査は2021年1月~22年2月、男女共同参画に関する8項目は満足度を0~5点の範囲で尋ねた。全国の働く男女約6万6000人から回答を得た。

 うち、40代以降で男性に比べ女性の不満が多くなっていたのが「仕事に見合う給料やボーナス」「上司からのふさわしい評価」「(正規や非正規など)いろんな立場の人が尊重されている」の3項目。「男性に比べて給料が低く、仕事の十分な裁量を与えられていないことが影響している」。調査を分析した立正大の永井智教授(臨床心理学)はこうみる。
◆育児は女性多く、時短選べば給料響き
 「育児のため時短勤務をしていた6年間は数値目標を120%達成しても給料に反映されず、管理職になるのも遅れた」。不満を漏らすのは都内の不動産会社で働く40歳目前の女性だ。フルタイム勤務に戻すと管理職に昇進したが、同期の男性との給料の差は開いたままだ。育休や時短勤務を選ぶ男女の後輩が昇進などで不利にならないよう会社に働きかけている。
 育児などにかける時間は女性が男性よりも長い。21年の総務省社会生活基本調査では6歳未満の子どもを持つ家庭で家事や育児などに費やす時間の7割以上を妻が担っていた。共働きは77.4%、専業主婦は84.0%だ。育児などを理由に女性は35歳以上に非正規雇用の割合が高まる傾向もある。育児など無償の労働時間は女性、有償の労働時間は男性に大きく偏っている中、女性の活躍には長時間労働の是正も必要だ。
◆「リスキリング、男女に公平に」
 ラフールの調査では、女性のほうが主体的に働きづらいと感じる傾向も強かった。都内の新興企業で広報を担当する女性(44)は「何でも屋さんだった」と振り返る。複数の企業で指示されるまま、営業事務や総務、広報、顧客対応、ホームページ刷新などさまざまな業務をこなしていたが、専門性を磨けず、給料が伸びなかった。
 将来に不安を感じ、30代後半から広報のプロを目指して講習会に自費で通った。働きながら学び直す「リスキリング」が功を奏し、企業の広報に転身。今は副業も手掛け、月収は30代よりも30万円ほど上がった。
 中年期に広がる男女差の解消には、永井氏は「リスキリングの機会を男女に公平に提供したり、職場でコミュニケーションを重ねたりすることが重要だ」と指摘した。

東京新聞 2023年6月20日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/257687