★Dr.イワケンの「感染症のリアル」
 身近なインフルエンザや帯状疱疹などから、海外で深刻なエボラ、マラリアなどまで、感染症の予防と治療について、神戸大学教授のイワケンこと岩田健太郎さんが解説します。

 新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類が「5類」になったことで、いろいろなところで感染対策のルールや仕組みが変わってきました。
まあ、正直「5類」とは関係ない、どさくさ紛れの変更も多々ありましたけど。

●小ずるい誘導
 例えば、文部科学省は児童・生徒が「マスクを外して学校生活を送ることができるよう情報発信しなさい」と促しています。
もともとは「マスクの着用を求めない」となっていて、「マスクはしてもしなくてもいいですよ、自己判断ですよ」という話だったはずなのですが
なんかビミョーに議論をスライドさせて、「マスクを外して」がゴールになっています。

もちろん、そこは官僚のやることなので「別にマスクをすることを禁止してはいませんよ」とちゃんと言い訳は用意していますが
巧みに「マスクを外せ」に誘導するあたりは小ずるいです。

●「5類」になったのに医療機関は逼迫
ところが、これが最悪のタイミングでした。
全国各地で新型コロナの感染者が増加した上に、エンテロウイルスによるヘルパンギーナやRSウイルス感染など
他の感染症も同時に流行しました。
本稿執筆時点で、特に状況が逼迫(ひっぱく)しているのは沖縄県です。
全国レベルよりもはるかに急な増え方のため、医療機関では、他の病気やけがの対応すら難しくなっています。
いわゆる「医療崩壊」状態です。すでに沖縄県から軽症や検査目的の受診を控えるよう、通知が出ています。

ちなみに、その沖縄県は「医療崩壊」とまでいわれているのに、県民への通知ではマスクの推奨は医療機関と高齢者施設訪問時のみ。
必死の状況下では「みんなマスクしてよー」となりそうなものですが。沖縄に限らず、多くの都道府県で文科省同様「マスク外せ」の圧力
(あるいは雰囲気)が醸し出されていますが、一体どんな力が働いているんでしょうねー。気になります。

●国が対策をしてくれる時代は終わったからこそ
 みなさん、どうも勘違いがあるようですが、「5類」になったことで「国がガンガン感染対策やってくれますよ」って時代は終わったんです。
しかしながら、ウイルス自体はオミクロン株以降、本質的には変わっていないんです。

ということはですね。「誰かが守ってくれる」から「自分たちで守る」という方向にシフトしなきゃダメだってことなんです。

続きはヨミドクター 2023/06/27
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20230626-OYTET50017/