東京電力福島第1原発で発生する処理水の海洋放出計画を巡り、政府内で放出の開始時期を8月下旬とする案が浮上していることが7日、関係者への取材で分かった。設備面では同日、処理水の海洋放出を始める前提条件が全てそろった。

 今後の政治日程などで流動的な面が残るものの、岸田文雄首相が関係閣僚会議を開いた上で、周知期間を設けて放出を始める段取りを想定。しかし、県内を中心に漁業者らは反対姿勢を崩しておらず、理解を得られるかどうかが大きな焦点となる。

 首相は7日、官邸で記者団に「引き続き安全性の確保や風評対策について国内外に丁寧に説明する。放出時期は夏ごろの方針に現在変更はない」と述べた。松野博一官房長官も記者会見で「決して先送りできない課題だ」と強調。政府は国際原子力機関(IAEA)の包括報告書も踏まえ、関係自治体や漁業関係者への説明に全力を挙げる。

 一方、日程を決める政治判断も迫る。林芳正外相は7月の東南アジア諸国連合(ASEAN)関連外相会合に合わせ、中韓両国外相との個別会談を調整している。9月上旬には首相がASEAN関連首脳会議など重要な国際会議に参加、国連総会の出席も控える。外交日程中の決定は考えにくく、政府関係者は「候補となる日程は、それほど多くない」と指摘している。

 東電は放出に使う海底トンネルなどの関連設備を6月26日に完成させ、原子力規制委員会が7日、使用前検査の合格を認めた。IAEAは「海洋放出は国際的な安全基準に合致する」「人や環境への放射線の影響は無視できる」とする報告書を4日に公表している。

 韓国政府は7日、処理水放出で排出される放射性物質濃度が「国際基準に合致することを確認した」とする独自の検証結果を公表。韓国の海域に及ぼす影響は大きくないとも評価した。

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