夏休み期間中は、川や海など水辺でのレジャーの機会が増え、水難事故のリスクも高まる。7月21日には福岡県で川遊びをしていた女子児童3人が流されて亡くなるなど、全国的に水辺の事故は後を絶たない。消防など関係機関はライフジャケット(救命胴衣)の着用を強く求めるとともに、遊ぶ際の正しい知識を家庭内で共有するなどリスクを減らす対策を呼びかけている。

 群馬県警によると、2023年の群馬県の水難事故は7月末時点(暫定値)で4件で、成人3人が死亡した。子どもが関連する事故は、17年に吾妻地域で川遊び中の男子児童(7)が深みにはまって溺れ、18年には高崎市内の小学校のプールで男子児童(9)が溺れた。いずれも救助されて無事だった。

 ここ数年は子どもの水難事故はないが、県警地域課は「いつ起きてもおかしくない」と強調する。晴れていてもダムの放流や前日の雨で増水している可能性があり、事前に情報を調べてから出かけるよう求める。

 子どもは水深が浅くても、倒れて顔に水がかかると呼吸ができなくなる恐れがあるとし、「必ず全員が救命胴衣を身に着け、保護者は子どもから目を離さないでほしい」と注意を促す。

 関係者は一様に救命胴衣の有効性を訴える。海上保安庁によると昨年、船から海に落ちた497人のうち救命胴衣の着用者は366人で、そのうち82%が助かった。一方で、非着用者は131人で半数が死亡・行方不明となった。救命胴衣の未着用者の死亡率は、着用者と比べて約3倍だった。

 前橋市消防局職員で、水難事故予防の啓発活動をする長塩典久さんは「河川は流れがあるため危険性が高い」とする。水に落ちた時は、背中を水面につけて浮いて救助を待つのが有効とされるが、流れのある河川ではパニックになり、浮く体勢を取れないまま溺れる危険性がある。救命胴衣を着用すれば自然に浮く上、体温低下や岩などから身体を守る効果も期待できるという。

 救命胴衣はスポーツ用品店やホームセンターで販売している。長塩さんは、必ず試着し、身体に密着する大きさで、ひもが緩んでも脱げるのを防止する股ひも付きを選ぶことが重要だと説明。「着用するのが当たり前になる環境づくりが大切」と力を込めた。

上毛新聞 2023/8/6 18:00
https://www.jomo-news.co.jp/articles/-/325120