「カルト宗教」の巧みな勧誘術、大学生の心の隙に入り込む手口と学校対策の今
高校教員が信者の例も、時期学年問わず要注意
2023/08/24 東洋経済education × ICT編集部
https://toyokeizai.net/articles/-/694759


カルト宗教の問題が世間で注目を浴びる中、勧誘のターゲットになりやすいのが大学生だ。SNSの活用で勧誘方法が巧妙化する中、大学側も積極的に対策に乗り出している。現在の勧誘の実態と、効果的な対策のあり方とは。当問題に詳しい立正大学心理学部教授の西田公昭氏と、大阪大学キャンパスライフ健康支援・相談センター教授の太刀掛俊之氏に話を聞いた。

高校教員に信者が紛れるケースも、時期学年を問わず狙われる

大学におけるカルト宗教の動向について、大阪大学でカルト宗教対策の予防・啓発を専門に担うキャンパスライフ健康支援・相談センター教授の太刀掛俊之氏は次のように語る。

「キャンパス内での勧誘は減少傾向にあり、SNS勧誘が増加していると思われます。実際、とあるカルト内ではSNS活用の勉強会も開かれているようです。素性を隠してSNSでコンタクトを取り、リアルでさらに距離を縮めるという『ハイブリッド手法』がはやっていて、従来の履修相談や自己啓発系のダミーサークルに加え、留学・就活・SDGs関連のイベント、オンラインサロンなど幅広い入り口が用意されています」

これまで多くの大学が、信仰の自由を尊重するためカルト宗教の問題には踏み込んだ対応をしてこなかった。しかし昨今の状況を受け、大学側も「正体を偽っての勧誘」については、むしろ学生の信仰の自由を妨げるものとして対策に取り組み始めている。一方で、大阪大学のように学内にカルト宗教対策の専門ポストを置くケースは全国的にも非常に珍しい。

「活動内容は、新入生を対象とした啓発講義「大学生活環境論」の実施、学内で実際にあった勧誘を紹介するショートムービーの作成、学内看板等による注意喚起、学生からの相談受け付けなどさまざまです。ここ数年はカルト宗教の社会問題化で勧誘が難しい状況にありましたが、親が信者である『宗教2世』の若手が勧誘の担い手となっています。彼らは基本的にダミーサークルを拠点としており、初手で見破るのは非常に難しい。サッカーやバレーボールなどスポーツ系サークルの形を取っている場合もあります。人間関係をつくり込んだ頃に合宿などが用意され、閉じた環境下で完全に取り込まれます。また、あれこれ理由をつけて『親や周りには言わないように』と口止めも欠かしません」(太刀掛氏)

かつて、勧誘のターゲットで目立つのは新入生だった。SNSで「#春から〇〇(大学名)」をキーワードに近づいてくるケースは現在も多い。しかし最近は、就職活動をする大学3・4年生や、最初のサークルを抜けた大学2年生など、時期や学年を問わず接触のタイミングがあるのが実情だ。そしてついに、その対象は高校生にも広がり始めているという。

「予防啓発に取り組む大学が出てきたことで、今では高校生もターゲットになっています。憧れの大学の先輩から勉強を教わる名目でコミュニティーに勧誘されたり、大学生活や将来を考える相談会で接触されたり。中には、高校の先生に勧められたサークルがダミーサークルだったという事例もあり、高校内部や身近な大人の中に信者が紛れている可能性もあるのです」(太刀掛氏)


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