県の旅行割引事業「くまもと再発見の旅」の不適切な助成金受給問題で、県幹部が一部を見逃すよう担当課に指示するなどの不正行為があったとする外部通報に関し、蒲島郁夫知事は8日、事実関係について調査する考えを示した。県庁で記者団に対し、「私は(指示を)していない」と自らの関与を否定した。

 この問題を巡っては、関係者が7日、公益通報者保護法に基づき、報道各社に外部通報した。

 見逃しがあったとされるのは、テレビ熊本(TKU)の関連会社であるTKUヒューマン(熊本市北区)の約3千件の旅行商品。熊日が入手した音声データでは、県庁内の協議で課長や政策審議監(当時)が「上司」から「もうよかろ」「県の決めようだろ」といった指摘を受けた、と担当課の職員に伝えている。

 蒲島知事は報道陣に対し、旅行商品約3千件について「公益通報制度の趣旨に沿って、事実確認と調査をするよう関係部局に指示した」と述べた。通報者が言及している「上司」について「私はそうしたことはしていない」と説明。誰が指示したかに関しては「知らない」とした。

 また、TKU側が不適切な助成金受給を公表する場合は社名を伏せるよう県側に求めたとされる問題の再調査についても、「今回の報道を受け、適切に対応したい」と明言した。

 入手した音声データを基に、熊日が政策審議監に確認したところ、「自分の声だ」と認めている。(内田裕之)

◆蒲島知事の一問一答 上司が誰か「知らない」◆

 県の旅行割引事業の助成金不適切受給を巡る問題に関し、蒲島郁夫知事は8日、記者団の質問に答えた。主なやりとりは次の通り。(小山智史、植木泰士)

 ─助成対象外の疑いがあった業者の旅行商品について、県幹部が見逃すよう担当課に指示したとして、関係者が報道各社に公益通報しました。受け止めは。

 「今の段階では県に通報が来ていない。詳細なコメントは差し控えたい」

 ─通報内容は確認されましたか。

 「事実確認するよう関係部局に指示した。調査、確認後に適切に対応したい」

 ─幹部が見逃しを指示したとされる約3千件(助成額約2千万円)について調査するのですか。

 「そうだ。適正だったかどうかについて調査する」

 ─公益通報では、上司が担当課長に見逃しを指示した、と訴えています。

 「私は指示したことはない。『上司からの指示』は報道を通じて知った」

 ─上司とは誰ですか。

 「知らない」

 ─国が想定していた助成要件とは異なる形で県が助成している、と通報者は指摘しています。制度の解釈を変えた運用ではありませんか。

 「それについても事実確認と調査をした上で、しっかりと回答したい」

 ─公益通報者保護法は、通報者への不利益な扱いを禁じています。通報者の保護については、どう考えますか。

 「通報者が保護されるという制度の主旨に沿って対応する」

 ─以前の記者会見で、TKUヒューマン側から名前の公表を控えてほしい、という圧力はなかったと認識していると言われた。その再調査はしますか。

 「今回の報道を通して、しっかりと適切に対応したい」

熊本日日新聞 | 2023年9月8日 17:40
https://kumanichi.com/articles/1165783