自民党総裁の岸田文雄首相が行った内閣改造・党役員人事は、各派閥への配慮に満ちた人事となった。来秋の総裁選に向けて敵対派閥を作らず、緩やかな「総主流派態勢」をめざす狙いだったが、不満も残した。

 首相は14日、山梨県富士吉田市のホテルで行われた岸田派(宏池会)研修会の懇親会に参加。「明日は今日より必ず良くなる時代、宏池会がリードしていきたい」と力を込めた。この日、かつて石破派事務総長だった田村憲久元厚生労働相の入会が了承され、所属議員は46人になった。

 1年前の前回改造で3人が入閣した岸田派からは今回2人。安倍政権では5人が入閣した時もあり、派幹部は「最低でも3人は押し込むぞ」と現状維持を目指した。結果には「総裁派閥ゆえに目立ちすぎてはいけない。我慢だ」と自らに言い聞かせるように語った。岸田派は唯一、入閣者を減らす派閥となった。

 その1枠を得た形になったのは、派閥化していない谷垣グループ。首相と近い遠藤利明前総務会長が代表世話人を務める。かつて宏池会会長だった故・加藤紘一元幹事長の三女、鮎子氏が少子化担当相に起用され、遠藤氏は「大変評価して頂いた」と話した。

 残る各派は入閣者数を維持したが、受け止めはバラバラだ。

 麻生派からは派が推した「入閣待機組」の伊藤信太郎氏が環境相に、武見敬三氏が厚労相に就いた。森英介事務総長は「適材適所で登用いただいた」。茂木派は茂木敏充幹事長が留任、小渕優子氏が選挙対策委員長に起用された。茂木氏は自身の留任をめぐり首相と神経戦になったが、領袖(りょうしゅう)としてあいさつした14日の会合では「内閣でも党でも要職を担うことになった。責任も大きい」と語った。

 最大派閥の安倍派は、官房長官に松野博一氏が留任し、萩生田光一政務調査会長、高木毅国会対策委員長も続投する。塩谷立座長は「閣僚5人を求めたが、基本的には満足」と話した。

 ひともんちゃくあったのが二階派だ。当初、「入閣は1人」と告げられ、不満に思った派幹部が「だったらゼロでいい」と突き返すと、2人目の入閣が決まったという。政権と距離を置く二階派に対して首相側が配慮を見せたはずだったが、同派幹部はこうした経緯が許せず、周囲にぶちまけた。「禍根を残すよ」

 最小派閥の森山派は会長の森山裕氏が党三役の総務会長になったが、入閣者は引き続きゼロ。所属議員は「副大臣や政務官に押し込むしかない」と期待する。(白見はる菜)

自民党の派閥別の各ポストの推移
     人数  閣僚(18人) 党幹部(8人)
安倍派  100人 4→4    2→2
麻生派   55人 4→4    1→1
茂木派   54人 3→3    2→2
岸田派   46人 3→2    1→2
二階派   41人 2→2    0→0
森山派    8人 0→0    1→1
谷垣グループ 約20人 0→1    1→0
無派閥    約50人 2→2    0→0
(注)党幹部とは党7役と副総裁。矢印の左は前回改造時、右は今回

朝日新聞 2023年9月15日 7時30分
https://www.asahi.com/articles/ASR9G6WNYR9GUTFK00J.html?iref=comtop_7_03