【ロンドン=大西康平】世界の債券市場で28日、金利上昇の波が広がった。米欧の長期金利が軒並み上昇(価格は下落)し、米国は16年ぶり、ドイツでは12年ぶりの高水準で推移した。米国の金融引き締めが長引くとの警戒感が根強いほか、フランスやイタリアが打ち出した予算案で財政赤字への懸念が広がり、金利が一段と上がる構図になっている。

28日の欧州債券市場では、ドイツの長期金利の指標となる10年物国債利回りが2.94%と前日から約0.11%超上昇した。フランスが約3.5%と12年ぶり、イタリアが約4.88%と11年ぶりの高水準で、それぞれ前日から0.1%以上高くなった。

米国の金利上昇がけん引する面が大きい。28日の米国の長期金利は一時4.69%と2007年10月以来の高さとなった。その後は4.5%台後半まで低下したものの、依然高水準が続く。米連邦準備理事会(FRB)による金融引き締めが長期化するとの見方が強まるほか、米連邦政府の予算案が月内にまとまらずに政府機関が閉鎖する可能性への警戒感が高まる。

欧州では財政赤字への懸念が、投資家の国債売りに拍車をかけた。フランスのルメール経済・財務相は27日、24年の財政赤字を国内総生産(GDP)比で4.9%から4.4%に削減する予算案を明らかにした。エネルギー支援策の打ち切りによって支出は減らすものの、高インフレへの対応で高齢者への年金や低所得層への給付を増やす方針を継続するなど、想定よりも財政赤字の減少幅が小さいとの見方が市場から出ている。

英HSBCのチャンタナ・サム・エコノミストは「フランスの債務の対GDP比は(今後下がらずに)横ばいが続く見通しで、投資家や格付け機関の懸念を引き起こす可能性がある」と分析する。格付け会社のフィッチは4月、仏国債の格付けをダブルAマイナスへと1ノッチ引き下げていた。S&Pグローバルも見通しを将来の格下げの可能性を意味する「ネガティブ」としている。

イタリア政府も27日、24年の財政赤字をGDP比で4.3%と、これまでの3.7%から上方修正すると発表した。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて凍結されたものの、欧州連合(EU)が加盟国に求めている3%以内に抑える財政基準を両国とも超えている。財政懸念から国債の売りが広がり金利上昇を招いた。

英キャピタル・エコノミクスのトーマス・マシューズ・シニアマーケットエコノミストは「米国の経済指標が予想を上回ったほか、欧州各国での高インフレの継続で長期金利上昇の勢いがさらに増した。24年にかけて多くの中銀が利下げに踏み切ると考えるが、そのペースは想定よりも遅くなりそうだ」と指摘する。

日本経済新聞 2023年9月29日 4:04 (2023年9月29日 7:53更新)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR28DCV0Y3A920C2000000/