広がる学校給食無償化、都立特別支援学校の子には届かず… 東京23区ごとに異なる対応

 東京23区で小中学校の給食費を無償化する動きが広がっているが、東京都が設置者の特別支援学校に通う児童生徒は多くが対象外となっている。本紙の取材では、区立小中学校の無償化を実施・実施予定の20区のうち、都立特支学校の児童生徒を対象に含めるのは6区にとどまった。格差の解消を求める声が上がる。(東京ニュース取材班)

 都立特支の児童生徒を、無償化の対象にするのは台東、墨田、江東、品川、中野、北区。学校教育法施行令では何らかの障害がある子どもの就学に関しては、保護者からの就学相談を受けた区市町村の教育委員会が、子どもの特性に合わせて通常学級、特別支援学級、特別支援学校といった就学先を、保護者の合意を得た上で決定する。品川区は今年4月の無償化開始当初から特支も対象とした。担当者は「区立学校の子どもとの差を生まないため」と説明する。

 一方、都立特支は無償化の対象外とする区がほとんどだ。「学校設置者として、区立小中学校が提供する給食を対象にしている」(大田区、豊島区、荒川区など)ことを理由にする区が多い。杉並区は、対象者の把握や支援の方法に課題があるとした。港区や世田谷区は、都が取り組むべきだと回答した。
 都教育庁都立学校教育部の担当者は都の対応について「お答えできるものがない」と説明。ただ負担軽減策として、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を活用し、9月末まで、1食あたり30円を補助しているという。
 23区では新宿、渋谷、練馬の3区が、学校給食の無償化を未実施で実施予定もない。中野区は「無償化」をうたっていないが、相当額を支給する事実上の無償化のため実施自治体に含めた。
 特別支援学校 都内は都立が区部・多摩地域全体で58校、区立(新宿、杉並、板橋、葛飾、大田区)が5校あり総在籍者数は2022年4月現在で1万3488人。うち都立の小学部と中学部には計7763人が通う。給食無償化に関する児童生徒数の統計はないが、大半は無償化にならないとみられる。

◆同じ都立校に通っても住まいで違い
 同じ東京都立の特別支援学校に通う児童生徒の間でも、どこの区に住んでいるかによって給食費が有償になったり無償になったりする。不公平感の解消のため保護者の声を踏まえた柔軟な対応が求められている。
 江東区は、給食無償化を区立小中学校の児童生徒だけを想定し、10月からの開始を予定していたが、都立特支の保護者有志からの区長あて要望を受け、対象を拡大する補正予算案を議会に提出した。都立特支に通う生徒の保護者は「就学時に区の教育相談を受け、通いたかった区立学校を諦め、特支に通っている。無償化対象の判断はありがたい」と話す。
 中野区と墨田区は、区立のほか国立、都立、私立、インターナショナルスクールなど、小中学生相当の子どもはどこに通っていても基本的に全員無償化する予定だ。いずれも「就学先によって差をつけるべきではない」と判断した。給食費相当額を現金給付するなどの方法をとる。
 ただこれらの区も区民が対象のため、各地から子どもが通う都立特支などの学校内では、無償の子どもとそうでない子どもが混在する。江東区の木村弥生区長は今月13日の会見で「住んでいるところで無償化であったりなかったりは違う。本来であれば国が対応すべきだ」と話した。
 中野区は「無償化は国がやるべきだ」として、今回の実質無償化は区内の保護者への「物価高支援」との立場を強調し、全国一律の取り組みを求めている。(井上真典、小形佳奈、長竹祐子)

 一律の取り組み求める声
東京新聞 2023年9月29日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/280405