https://news.yahoo.co.jp/articles/ed649aa353a3d6458cde9bd577e1523d19c0fa29
 ウクライナの戦場で使用され、その威力と恐ろしさを存分に発揮しているクラスター弾。
ウクライナ政府はさらにアメリカからの長距離ミサイル供与を求め、正式な決定を待っている状況だが、
そうした中で米国製ATACMS(陸軍戦術ミサイル)からクラスター弾が発射され、標的に「壊滅的」なダメージを与える瞬間を捉えた動画が注目を集めている。

【動画】「まさに壊滅的!」米ミサイルATACMSから飛散したクラスター弾による爆撃の瞬間
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/09/atacms-2_1.php

オスロ大学(ノルウェー)博士課程研究員のファビアン・ホフマンは本誌に対して、
動画に映っているのは米陸軍ATACMSのおそらくM39が、M74小型爆弾を飛散させる様子を捉えたものだろうと語った。
動画の撮影場所と撮影時期について、本誌は独自に裏付けを取ることはできていない。

ロシアとの全面戦争に突入して19カ月以上になるウクライナは、以前から長距離ATACMSを欲しがっていた。
だがイギリスとフランスがATACMSと射程距離が同程度である共同開発の巡航ミサイル「ストームシャドウ/SCALP」を既にウクライナに供与している一方で、
アメリカはATACMSの供与をためらってきた。

ATACMSは最大射程が300キロメートル。
これを入手できれば、反転攻勢を続けるウクライナは、前線のはるか後方にあるロシアの占領地域を攻撃することができるようになる。
こうしたなかで最近、アメリカがウクライナにATACMSを供与するつもりだと示唆する報道が浮上している(アメリカはこれを正式には認めていない)。
米政府は9月28日にウクライナへの新たな軍事支援策を発表したが、ATACMSへの言及はなかった。

■ATACMS供与ならドイツの後押しにも?
米ウォール・ストリート・ジャーナル紙やNBCニュースは先週、ジョー・バイデン米大統領がウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領に、
ATACMS供与の方針を伝えたと報道。
米ワシントン・ポスト紙は、バイデン政権がまもなく正式発表を行う見通しで、アメリカが供与するのはクラスター爆弾を搭載するタイプのATACMSだと報じた。
本誌はこの件についてホワイトハウスと米国防総省にメールでコメントを求めたが、返答はなかった。
元米陸軍将校のベン・ホッジスは本誌に対して、クラスター爆弾搭載型のATACMSは「クリミアにあるロシアの大型施設を破壊できるほどの威力はないだろう」と述べた。

ウクライナはこれまで、クリミアにあるロシアのインフラ(橋など)の攻撃に長距離ミサイル「ストームシャドウ」を何度も使用し、
9月に入ってからはセバストポリでロシア軍の艦船2隻に対しても同ミサイルを使用したと報じられている。
またアナリストらは、アメリカがATACMSの供与に動けば、それがドイツによる長距離巡航ミサイル「タウルス」の供与を後押しすることになるだろうとも示唆している。
ウクライナは「タウルス」についても供与を要請してきた。

だがクラスター爆弾については賛否両論がある。アメリカは7月に対人・対装甲車両用クラスター弾「DPICM(二重用途改良型通常弾)」の供与に合意し、
その後すぐに、ウクライナ南部と東部で反転攻勢を推し進めるウクライナ軍が、初めてクラスター弾を使用する様子を捉えたとされる動画が浮上していた。
米政府が28日に発表した新たな軍事支援パッケージには、ウクライナに追加で155ミリのDPICM弾を供与する内容も含まれている。