22日に投開票された埼玉県所沢市長選挙で、無所属新人で元衆院議員の小野塚勝俊さん(51)が、自民党や公明党から推薦を受けて4選を目指した現職の藤本正人さん(61)らを破り、初当選を確実にした。小野塚さんには、手厚い子育て支援策を推進したことで知られる、兵庫県明石市の泉房穂ふさほ前市長(60)の応援が入り、話題となった。
 9月の東京都立川市長選でも泉さんが支援した無所属新人が、自民党推薦候補に勝利。各地の地方選でも泉さんが応援に入る候補が相次いで当選している。何が起きているのか。(デジタル編集部)

◆旧Twitterのフォロワー50万人超え
 泉さんは暴言問題を理由に今春に引退するまで、12年間明石市長を務めた。市の子育て関連予算を2倍にし、18歳までの医療費や第2子以降の保育料、中学の給食費など「5つの無料化」を実施。市は10年連続人口増加に転じ、注目を集めた。X(旧Twitter)のフォロワー数は50万人を超え、全国的な知名度も高い。
 告示後に応援に入った泉さんは「市長は政党の子分ではない。市民の代表や。自民党に気を遣うのではなく、市民1人1人に気を遣うのが市長だ」と「市民対政党」の構図を強調。自身が明石市で行った子育て政策などを紹介し「どこのまちでもできんねん。政治が変われば、トップが変われば、政策も変わるし、まちの雰囲気も変わるし、生活も助かる」と訴えた。
 小野塚さんも「12年間で明石は劇的に変わった。私は、これをこの所沢でやって、この所沢を変えていきたいんです」と続いた。
◆「明石市の無料化政策 やりきる!!」
 小野塚さんは選挙戦の公約で「明石市が行った5つの無料化政策 やりきる!!」と掲げた。選挙公報にも泉さんの似顔絵を掲載するなど全面的にアピールし、告示後には何度も泉さんが所沢に応援に入るなどして、話題を集めてきた。遊説先では、子育て世代が足を止めて聞く姿がみられた。

 小野塚さんによると、市長選の出馬を考えたときに、泉さんにアドバイスをもらいに行き、意気投合したという。泉さんも「所沢のまちはポテンシャルが高い。小野塚さんとまちには可能性がある」と応援を決めた。
◆「国にも広げたい」
 泉さんが応援に入った候補が選挙戦で勝利する現象は各地で続いている。4月に市長引退後、自身のユーチューブチャンネルで「明石でできたことは、全国どこのまちでもできうることなので、それをやろうとする動きとか機運があれば応援をしていきたい。国にも広げていきたい」と宣言した。
 5月の兵庫県加西市の応援候補は落選したものの、7月の兵庫県三田市長選、9月の岩手県知事選、東京都立川市長選でも応援候補が当選した。10月の講演ではこう話した。「総選挙で一定期間勝てる、強い政治勢力をつくって日本の政治を変える。私はその脚本監督をしたい」

東京新聞 2023年10月22日 22時50分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/284925