衆院憲法審査会が2日、今国会で初めて開かれた。岸田文雄首相は来年9月の自民党総裁任期満了前の憲法改正を目指すと公言しており、改憲派からは条文案作成を会期内にどこまで進められるかが「首相の本気度」の試金石になるとの声が上がる。ただ、初日の審査会はわずか1分で終わるなど、首相の掛け声は早くも空回り気味だ。

 この日の審査会は幹事選任などの議事を終えると1分足らずで散会。討議は行われなかった。改憲に積極的な議員からは「もっと議論すべきだ」との不満が漏れた。
 首相は今国会冒頭から改憲への意欲を繰り返した。10月23日の所信表明演説で「先送りできない重要課題」と位置付け「条文案の具体化など、これまで以上の積極的な議論」に期待を表明した。同25日の衆院本会議では「総裁任期中に改憲を実現したい」と重ねて明言した。
 しかし、衆院憲法審査会の現場は首相の号令通りには動いていない。同審査会の定例日は木曜日。9日に2回目が予定されるが、内容は海外視察の報告にとどまる。祝日を除けば、12月13日の会期末までに審査会を開けるのは残り3回だけ。参院憲法審は初回の日程すら決まっていない。
 衆院憲法審の与党筆頭理事に就いた自民の中谷元・元防衛相は審査会後、記者団に「各党とよく話し合い、一つ一つ丁寧にやっていきたい」と強調。野党筆頭理事を務める立憲民主党の中川正春・元文部科学相は総裁任期中の改憲を掲げる首相を「許せない」と批判し、慎重姿勢で臨む構えを見せた。
 大規模災害時に国会議員の任期延長を認める「緊急事態条項」創設については、自民、公明、日本維新の会、国民民主4党の合意が形成されつつある。維新の馬場伸幸代表は記者団に条文案の取りまとめは可能だとの認識を示し、「残り3回の審議で(首相の)本気度が分かる」と語った。
 国民の玉木雄一郎代表も「首相の覚悟と本気度が問われる」と指摘。公明の北側一雄副代表は記者会見で「緊急事態条項(の議論)はかなり煮詰まっている」と話した。
 自民内では、首相が改憲に前のめりな発言を続けるのは、総裁再選や衆院選をにらみ「保守派の支持をつなぎ留めるため」との見方もある。維新幹部は「首相は本気で改憲を進めなければ自分の首を絞める。保守派の支持離れが進む」とけん制した。

時事通信 2023年11月03日07時05分
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