神戸市内で2021年、1型糖尿病の治療の影響で低血糖症状を感じていたのに乗用車を運転し、人身事故を起こしたとして、自動車運転処罰法違反(過失傷害)の罪に問われた女性被告(30)の判決公判が7日、神戸地裁であった。松田道別裁判官は過失があったとする証明がないとして、無罪(求刑禁錮1年2月)を言い渡した。

 判決によると、事故は21年10月17日午後9時半ごろ、同市北区有野町で発生した。女性は車を運転中、意識がもうろうとし、対向車線を走っていた車に衝突。乗っていた20〜40代の3人が重軽傷を負った。女性は約3時間前、血糖値を下げるインスリンを自己注射していた。

 女性は医師の指導に基づいて、日頃からインスリンを注入しており、公判では、女性が運転中に冷や汗や手足の震えなど低血糖の初期症状を感じたかどうかなどが争われた。

 検察側は「低血糖の症状は段階的に現れるため、事故前から何らかの初期症状を感じていた」と主張したが、判決は、女性がこれまで運転中に低血糖状態に陥ったことがなかった点や、初期症状を感じなかった可能性があるとした専門医の証言などを踏まえ「運転中に低血糖の症状を感じた事実は認められない」と判断した。インスリンの注入量も明らかに過剰ではなかったとした。

 判決を受け、神戸地検は「判決内容を十分に検討して、適切に対処したい」とコメントした。

神戸新聞 2023/11/7 21:04
https://www.kobe-np.co.jp/news/jiken/202311/0017004511.shtml