所得税減税の具体的な姿は…与党税調の議論本格化 扶養控除は縮小?防衛費増税の時期は?論点まとめ

 自民、公明両党は17日、税制調査会の総会をそれぞれ開き、2024年度の税制改正の議論を本格化させた。1人4万円の所得税と住民税の定額減税について、実施回数や所得制限など具体的な制度が焦点。24年度は実施が先送りされたものの、将来の負担増につながる防衛費増税の開始時期も注目される。(市川千晴、近藤統義)
◆12月中旬に結論 2024年度税制改正
 所得税などの減税は、2日に閣議決定された経済対策の柱で、政府は1回限りの実施で、所得制限なしという大枠を示している。だが、自民党内には所得制限を設けるべきだという意見がある一方、公明党は現時点で回数を1回に限定する必要はないとしており、調整が難航することが予想される。
 家計に関連する税制では、児童手当が来年から高校生まで拡充されることに伴い浮上した、扶養控除の見直しについても論点だ。
 防衛費増のための増税については、所得、法人、たばこの3税で1兆円超を確保する方針は既に決まっている。公明は所得税減税との整合性から、所得税を外した上で2税からまず増税するという案を示唆。対する自民は否定的な姿勢だ。
 企業の賃上げを巡っては、従業員の給与を一定以上の割合で増やした企業の法人税を減税する「賃上げ税制」の期限が23年度末で切れる。経済対策ではこの税制の「強化」が明記されており、延長される方針。ただ、賃上げ効果が小さいとの指摘もあり、拡充の内容は課題だ。
 両党は各省庁などからの要望を踏まえて議論し、12月中旬に与党の税制改正大綱をまとめる。
◆扶養控除「廃止」なら児童手当拡充されても「負担増」の恐れ<Q&A>
 児童手当の支給が高校生まで拡充することを受け、扶養控除の見直しも与党税制調査会で議論されます。この税制の仕組みと、見直しに向けた課題をまとめました。(市川千晴、山田晃史)

 Q 控除の仕組みを教えてください。
 A 16〜18歳の子どもを扶養する世帯の税負担を軽くする制度です。子ども1人につき、所得税で年38万円、住民税で年33万円が所得から差し引かれて、税金が計算されます。15歳以下の年少扶養控除については、民主党政権が子ども手当(現在の児童手当)を創設した際に、廃止されています。
 Q 見直しの理由を教えてください。
 A 政府は、今年6月にまとめた「こども未来戦略方針」で、児童手当の対象を16〜18歳にも広げ、月1万円の支給を決めました。その際、控除が廃止された中学生以下との整合性を取るという理由から、「扶養控除との関係を整理する」と記されたからです。
 Q 仮に、廃止になった場合の影響は?
 A 所得によっては、新たに支給される児童手当に比べ、控除廃止による税負担の方が大きくなる世帯が生じます。そのため、子育て中の親らでつくる「子育て支援拡充を目指す会」は先月、約5万3000筆を超す署名を矢倉克夫財務副大臣に提出し、扶養控除の存続を訴えています。 
 Q 議論の方向性はどうなりそうですか。
 A 負担増に対する批判を避けるため、岸田文雄首相は「廃止を前提にしていない」と強調しています。控除の廃止ではなく縮小の方向で議論が進みそうです。その場合、縮小幅が焦点になります。

東京新聞 2023年11月18日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/290729