イクラが今年、値下がりしている。ここ数年は過去に例がないほど高騰していたが、売れ行き悪化で膨らんでいた在庫を処分する動きが出てきたほか、海外産原料の輸入が順調だったため。年末年始の需要期に向けて、ちょっと買いやすくなったイクラを店頭で見掛ける機会が増えそうだ。(時事通信水産部 荒木建)

◆消費不振で在庫増

 東京・豊洲市場(江東区)の11月上旬の冷凍イクラの卸値は、北海道産が1キロ当たり8000〜1万円で、昨年より2〜3割値下がりしている。仲卸店では200〜250グラムのパック入り製品が1個2000円前後で売られており、高値がピークだった昨年と一昨年末に比べ1000円近く安くなっている。

 値下がりの理由について豊洲市場の卸会社は「消費不振で全国的に在庫が増え、保管料などもかさむため、この秋から相場が見直された」と説明する。農林水産省の統計によると、国内主要冷蔵庫の冷凍サケ・マス卵の在庫量は2022年10月以降、高水準で推移。今年の4月まで、少ない月の2倍近い6000トン前後が月末在庫として積み上がるケースも複数月あった。

 在庫量が増えた理由には、海外産原料を使って国内で加工した製品の供給が順調だったことも重なる。主力のロシア産の場合、原料として国内に入ってきた22年は魚卵を含む冷凍サケ類の輸入量が約3820トンに上り、前年より約12%多かった。

◆今後は値上がりもある?

 一方、ロシア産とは対照的に国内のアキサケ漁は今年、不漁に見舞われている。北海道が集計した、道内の11月下旬までの今季水揚げ数量は前年から約35%も減少。親魚のサケが不漁でもイクラが安くなるこうした逆転現象は「前例がほとんどなく、極めて異例」と豊洲のベテラン仲卸業者は話す。

 11月上旬の都内鮮魚専門店の小売り価格は、通常は100グラム当たり1500円前後で、特売時は同1000〜1200円。最安値はインターネット通販で、大手サイトには500グラムの化粧箱入りが送料込みで約5500円と、卸値並みの特売をアピールする北海道の業者も現れた。

 水産物消費がピークを迎える12月は、スーパーなど量販店も高級品の扱いを増やすため、特売などの販売競争が一段と活発化する見通し。サケの不漁で今後は再び値上がりする可能性も高く、今年はイクラをお得に楽しむ、またとないチャンスと言えそうだ。

11/19(日) 17:56 時事通信
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