「なぜボール遊びはダメなの?」。全国に11万カ所以上ある国や自治体が設置する「都市公園」で、ボール遊びが禁止されているところは少なくない。制限する自治体は全国で6割に上るとの調査もあるが、住民らがルール作りに関わることで自由を取り戻そうという動きがじわりと広がる。都市公園の制度ができて今年で150年。公園で起きつつある変化を探った。

 「こっちに投げて!」。福岡市中央区の住宅街にある草香江(くさがえ)公園。1200平方メートルあまりの園内の広場で、ゴムボールを使ってキャッチボールをする兄弟の表情は明るい。この公園では硬式や軟式野球ボールなどの硬いボールは禁止されているが、軟らかいボールの利用は可能だ。見守る父親は「ボール遊びができるのはありがたい」と目を細めた。

 もともと、園内のボール遊びは一律で禁じられていたが、守らない子どもも多く、周辺住宅の敷地にボールが入るなどして住民から苦情が相次いでいた。

 市が対応に苦慮する中、「話し合いで解決できないか」と考えたのが地域の公園愛護会の会長、嶽村(たけむら)久美子さん(73)だ。2016年に市などと約300世帯にアンケートを取り、ワークショップを開くと「小さな子ども連れがボール遊びを怖がっている」との声が上がる一方、子どもからは「ルールが厳しくなると遊び場がなくなる」との意見が出た。

 こうした声を踏まえ、嶽村さんらは公園利用の基本ルールを作成。バットなどボールを打つ道具の使用を禁じたが、軟らかいボールで遊ぶのは認めた。フェンスなどに当てなければサッカーもできる。公園で禁止されることが多い花火も、手持ちであれば大人の見守りを条件に可能とした。

 ルール作りの経緯や内容を書いた冊子を作り町内で配布すると、トラブルは減った。嶽村さんは「立場や考えが異なる人が集まるからこそ互いに納得することが大事だ」と強調する。

 都市公園を規定する「都市公園法」には遊び方について特段の禁止項目はなく、制限しているのは管理する自治体などだ。

19年に千葉大大学院生らが全国399自治体を対象に調べたところ、回答した276自治体の約6割が公園のボール遊びを規制。近隣住民からの要望を理由に挙げた自治体が多く、規制開始時期や理由を「不明」とした自治体も目立った。

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毎日新聞 2023/11/26 06:00(最終更新 11/26 10:40)
https://mainichi.jp/articles/20231122/k00/00m/040/415000c