子どもの約1%に、聴力検査では異常がないのに、聞き取れない、聞き間違いが多いといった「聞き取り困難症(LiD)」の症状があることが、日本医療研究開発機構(AMED)研究班の調査でわかった。国内初の大規模疫学調査で、国際雑誌に論文が掲載された。

 LiDは、耳から入った音の情報を脳で処理して理解する際に、なんらかの障害が生じると考えられている。単語が言葉として入ってこない、耳で聞いただけでは理解できないといった症状がある。騒がしい場所や複数での会話、電話、接客、授業といった場面で自覚しやすい。

 海外では人口の0・2〜5%に症状があるという報告がある。国内ではあまり知られていなかったが、ここ数年、SNSなどを通じてその存在が知られ、診断を求める人が増えてきた。

 研究班は2021〜22年、関西の小・中・高校9校に通う計4350人の子どもと、その保護者を対象にアンケートを実施。「『佐藤』を『加藤』など聞き間違いが多い」「『なに?』と聞き返しが多い」といったLiDに関する質問のほか、「学習などで集中を続けるのが難しい」といった発達に関連する質問について、それぞれ743人から回答を得た。

 その結果、LiDの症状を自覚する頻度が「若干高い」は12・4%、「中程度」は2・8%、「かなり高い」は0・8%だった。学年が上がるにつれ割合が高くなる一方で、保護者は症状を過小報告する傾向にあり、周囲が気づきにくい構造も明らかとなった。

 さらに、保護者の10%が子どもに発達上の問題があると回答し、LiDの症状が重いほど発達問題のスコアも高い傾向がみられた。LiDを自覚する人の34%にADHD(注意欠如・多動症)があるという国内の先行研究もある。

 研究責任者の阪本浩一・大阪公立大准教授(耳鼻咽喉〈いんこう〉科)は「少なくとも症状の頻度がかなり高い0・8%はLiDと診断される可能性が高い。聞き取りに困難があると、子どもの学習や言語習得に悪影響を及ぼす可能性があり、早期に診断を受け、対策を取ることが必要だ」と話す。(枝松佑樹、丘文奈)

「天然」と言われ… 生きづらい当事者
 LiDは長年、「聴覚情報処…(以下有料版で,残り494文字)

朝日新聞 2023年12月3日 15時00分
https://www.asahi.com/articles/ASRD23HRBRCNUTFL00W.html?iref=comtop_7_01