https://president.jp/articles/-/76398?page=1
※略
大麻には100種類以上の「カンナビノイド」と呼ばれる有効成分が含まれているが、そのなかで最も重要な作用を持つとされるのがCBDとTHCである。
※略
大麻が多くの国で禁止されてきた大きな理由の1つは、THCが含まれているからだが、近年はその危険性は比較的低いことがわかってきて、それが世界的な大麻解禁の流れにつながっている。
米国立衛生研究所(NIH)の医学文献情報データベースでも、大麻使用のリスクはオピオイドの使用に比べて大幅に低いことを示す文献が提示されている。

しかし、日本ではTHCは厳しく禁止されているため、大麻グミの業者は法に触れないようにTHCの化学構造式を少し変えたりして類似成分をつくり、
それを使ったグミを「合法大麻」として販売しているのである。
前述の体調不良者が食べたグミにも「HHCH」(ヘキサヒドロカンナビヘキソール)というTHCに似た成分が含まれていたことがわかっている。
この成分にどの程度の健康への悪影響があるのか定かではないが、それが体調不良の原因になったことは間違いないだろう。

■かつて社会問題化した「危険ドラッグ」
大麻グミ問題の本質は業者が違法のTHCに似た成分を使って合法大麻として販売しているところにあるが、
本物の大麻成分ではないので、正確に言えば「疑似大麻グミ」ということになる。
※略
しかし、違法ではないとしても、そのなかにどんな有害物質がどのくらい含まれているのかわからない。
当時、合成カンナビノイドは米国でも蔓延し、深刻な社会問題になっていたが、筆者が取材したカリフォルニア州サンディエゴにある
カイザー・パーマネンテ病院の急性薬物中毒治療室のジェフ・ラポイント医師はこう話した。
「合成カンナビノイドは中枢神経を刺激する成分がどのくらい入っているかわかりません。なかには本物の大麻より200倍も強いものもあり、
服用したら脳は激しい衝撃を受けるでしょう。本当に危険なのは大麻ではなく、合成カンナビノイドなのです」と。

■「大麻は危険」は問題の本質ではない
すでに述べたように大麻グミは本物の大麻成分を使った製品ではない。
従って今回の事態を受けて、「大麻は非常に危険だから、規制を強化すべきだ」という方向に議論が進むのは筋違いだろう。
そもそも大麻はどの程度の健康被害があるとされているのか。

厚生労働省と麻薬・覚せい剤乱用防止センターは、「ダメ。ゼッタイ。」という標語のもとに、覚せい剤と大麻の有害性を強調した啓発活動を行ってきた。
しかし、実際には両者の有害性は大きく異なり、海外ではそれを具体的に示す調査結果がいくつも発表されている。
たとえば、世界で最も評価の高い医学雑誌の1つである『ランセット』(2010年11月)に掲載された英国の薬学者、デビッド・ナット教授(インペリアル・カレッジ・ロンドン)の調査では、
薬物の有害性(死亡率、精神機能の障害、依存症、他者への危険などを含む)の最大値を100とした場合、
アルコールが最も高くて72、ヘロイン55、クラック54、覚醒剤33、コカイン27と続き、大麻は20となった。

■危険度はカフェインと同程度
また、米国立薬物乱用研究所(NIDA)の臨床薬理学主任研究員を務めたジャック・ヘニングフィールド博士が行った「一般的な薬物の危険度比較調査」でも、
大麻の危険度(依存性、耐性、禁断症状、中毒性など)はヘロイン、コカイン、ニコチンなどより大幅に低く、カフェインと同等程度であることが示された。
これらの調査を見れば、厚労省などによる大麻に関する危険性の評価は過度なものであるといえるだろう。

実は、今国会では大麻取締法の改正案が審議中であり、これまで禁止されていた大麻の所持に加えて使用に関しても新たに「使用罪」を創設し、
7年以下の懲役を科そうとしている。このような前提に基づいて使用罪を創設するのは合理的とは言えない。
そもそも厳罰化しなければならないほどの有害性が大麻にあるとは思えず、立法事実は乏しいと言わざるを得ない。

厚労省は若者の大麻事犯の検挙者数増加を理由の1つに挙げているが、現状においてそれが深刻な社会的弊害を生じさせているとは思えない。
逆に使用罪ができれば、大麻を使用して逮捕・拘禁・起訴され、レッテルを貼られて学習や就職の機会を失う若者が増えることが予想される。
そうなれば、社会的な利益よりも損失の方が大きくなるだろう。
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