公文書改ざん、二審も赤木さんの妻の敗訴 大阪高裁判決 [大阪府]:朝日新聞
https://www.asahi.com/articles/ASRDL51YZRDGPTIL00T.html

森下裕介 2023年12月19日 15時09分

学校法人森友学園への国有地売却をめぐる財務省の公文書改ざん問題で、改ざんを強いられ、自死した近畿財務局職員の赤木俊夫さん(当時54)の妻雅子さん(52)が、改ざん当時に同省理財局長だった佐川宣寿(のぶひさ)氏に1650万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が19日、大阪高裁であった。黒野功久裁判長は、雅子さんの請求を棄却した一審判決を支持し、控訴を棄却した。

赤木さん「夫のような人を生まないよう」 公文書改ざん、あす判決
「訴訟の目的」を加え徹夜で書いた訴状 夫が自死した赤木さんのため

 公文書の改ざんは、国有地売却問題が明らかになった2017年2~4月に行われ、財務省は18年6月に公表した調査報告書で、佐川氏が「改ざんの方向性を決定づけた」と認定した。一方、俊夫さんが改ざんの経緯をまとめた「赤木ファイル」などでは、俊夫さんが改ざんに異を唱えた記録が残されていた。

 雅子さんは訴訟で「夫は改ざんに抵抗したのに強制された。強い精神的負荷を受けて自死した」と訴えた。しかし、22年11月の一審・大阪地裁判決は、国家公務員が職務で損害を与えた場合、賠償責任は国が負い、公務員個人は負わないという最高裁判例を適用し、雅子さん側の請求を棄却した。

 控訴した雅子さん側は佐川氏の行為について、「局長という地位を利用して改ざんを指示し、民主主義の根幹を崩した。個人の責任を否定する根拠はない」と主張。「公務員個人の責任を問わないと、組織を守るための違法行為の強行を抑止できない」などとする行政法の専門家の意見書を提出した。

 一審判決などによると、近畿財務局職員だった俊夫さんは17年2月以降、財務省からの指示などの対応に追われた。当時の安倍晋三首相は、妻昭恵氏が国有地に開校を目指していた小学校の名誉校長であることなどを国会で追及され、「私や妻が関係していたということになれば、首相も国会議員も辞める」と答弁。俊夫さんは、財務省理財局の指示で公文書の改ざんに関わった。

 俊夫さんは17年7月にうつ病と診断され、休職。18年3月、朝日新聞が公文書の書き換え疑惑を報じた5日後に自宅の居間で亡くなった。近畿財務局は19年2月、公務災害に認定した。

 雅子さんは当初、国と佐川氏を相手取り訴訟を起こした。しかし、国が21年12月、「訴訟を長引かせるのは適切ではない」として、請求を受け入れる「認諾」をしたため国との訴訟が終結。佐川氏との訴訟が残った。雅子さん側は一、二審ともに佐川氏の尋問を請求したが、いずれも認められなかった。(森下裕介)