失業、病気、家族の離散――。生活が立ち行かなくなるきっかけは、誰にとっても身近にある。記録的な物価高も暮らしを直撃する。今の社会で人が人らしく生きる最後のとりでは生活保護だ。財源が逼迫(ひっぱく)する中、受給前から困窮者を支えることはできないか。生活保護の受給者が政令市で全国最多。保護率も全国平均1・62%を大きく上回る4・74%の大阪市で、支援の枠組みが広がる。

「オープンな駆け込み寺」救いに
 「パニック障害を起こして出社できなくなり、社宅を追い出された」。大阪市西成区の相談窓口に、女性として生きるトランスジェンダーのミキエさん(64)=仮名=が駆け込んだ。元々は男性として得意の英語を生かし、貿易関係の仕事に就いていた。しかしアルコール依存症になって妻子と別居。財産を家族に渡し、再出発するも次第に上司のいじめに追い詰められた。

 西成区役所にある窓口は、区の花にちなんで「はぎさぽーと」と呼ばれる。2013年12月に成立した生活困窮者自立支援法(困窮者支援法)に基づいて市が設置。7人の支援員が、生活に困っている人を生活保護の受給前段階で支える。

 「経済的にも精神的にもボロボロだった」と振り返るミキエさん。借金を抱がらも、何とか西成区内に住む家を見つけた。支援員の小林邦子さん(71)が「ゆっくり休んだ方がいい」と声を掛け、生活再建策を考えた。傷病手当金を受け取り、ミキエさんは当面の生活を維持した。

 就職活動は別の支援員、藤原健二郎さん(71)が支えた。年齢もネックになり不採用が20社以上続いたが、藤原さんは「すっぴんの自分でいけばいい」「ゲーム感覚でどんどん応募すればいい」と激励。履歴書の書き方…(以下有料版で、残り1930文字)
毎日新聞 2023/12/21 07:00
https://mainichi.jp/articles/20231219/k00/00m/040/126000c