1日に石川県能登地方で最大震度7を観測した地震で、年始の基幹交通網が大きく乱れた。上越・北陸新幹線は一部区間で2日午前も運転を取りやめる。新幹線や高速道路が災害で寸断されれば輸送システムに深刻な影響が及ぶ。耐震化は道半ばにある。

JR東日本によると、上越新幹線の越後湯沢―新潟間と北陸新幹線の長野―金沢間は地震の影響で2日午前も運転を見合わせる。地震による設備への影響の点検に時間を要するためという。

同社は「点検の状況によって2日午後も運転を取りやめる可能性がある」と説明している。

JR西日本によると、北陸新幹線の富山―金沢間では地震の影響で列車4本が止まり、車内に乗客ら計約1400人が取り残された。

中日本高速道路によると、北陸自動車道と東海北陸自動車道の一部区間で通行止めが続いている。

国土交通省によると、能登空港(石川県輪島市)では滑走路に約10センチ、長さ10メートル以上のひびが数カ所確認された。滑走路の使用再開などの見通しは立っていない。全日本空輸(ANA)は2日、羽田―能登の全4便を含む計8便を欠航する。

今回の地震による主要インフラの損傷の程度は詳細には判明していない。近年、大規模な地震で交通網がまひするケースが相次いでいるが、新幹線や高速道路の地震対策は途上にある。

国土交通省は1995年の阪神大震災で山陽新幹線の高架橋が倒れたのを受け、東北、上越、東海道、山陽の4新幹線で耐震化を進めるよう求めてきた。高架橋の耐震化は2022年3月末時点で東海道と山陽ではほぼ完了。JR東日本管内の東北、上越は8割弱にとどまっていた。

22年3月に起きた福島県沖地震では宮城、福島両県で最大震度6強を観測し、東北新幹線の高架橋や電柱など約1千カ所が損傷した。福島―仙台間で長期運休し、全線再開まで約1カ月かかった。事態を受けて国交省は耐震化の前倒しを要請、JR東は投資費用を積み増し25年度末までに高架橋の耐震化を完了する方針を示している。

高速道路の耐震化完了も遠い。会計検査院によると、高速各社で耐震化が必要な全国の橋脚4454カ所のうち22年度末時点で工事が完了したのは449カ所だった。未完了の現場の7割以上では工事の契約が未締結で、着手の見通しが立っていない。

首都直下地震や南海トラフ地震といった巨大地震の発生が予測されている。基幹交通網が深刻なダメージを受け影響が長期化すれば、被災者支援や復興にも支障をきたしかねない。今回の地震は交通インフラの耐震化の重要性を改めて突きつけている。

(村越康二、高橋彩)

日本経済新聞 2024年1月2日 5:00 (2024年1月2日 6:55更新)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE011JC0R00C24A1000000/