鉄鋼や造船などの労働組合でつくる基幹労連は11日、今年の春闘で鉄鋼部門は賃金体系を底上げするベースアップなどの賃金改善に月3万円を求めることで最終調整していることを明らかにした。鉄鋼部門の要求は2年ぶり。要求額は物価高への対応から第1次石油危機のあった1975年以来、約半世紀ぶりの高い水準となる。

 鉄鋼業界の労働組合は2年に1度、2年分の賃金改善を要求する方式を長年とってきた。物価高に対応するため今年は単年度分のみを要求する。2022年の春闘で23年分についても月2千円の賃金改善で妥結済みだったため、物価上昇局面でも要求せず、造船などの他産業と比べて大きな開きが生じていた。鉄鋼業界の賃金水準が相対的に低いため、大幅な賃金の引き上げによって人材の確保や定着をはかる狙いがある。

 基幹労連傘下の造船・重機部門は月1万8千円、非鉄部門は月1万5千円の賃金改善を求める方向だ。

 鉄鋼業界では経営側も賃上げに意欲を示している。日本鉄鋼連盟の北野嘉久会長(JFEスチール社長)は昨年12月の会見で、「賃上げは昨今の物価上昇、人材確保の観点から経営者として必ず実現せねばならない。組合と要望をよく聞きながら交渉していきたい」と話した。(宮川純一)

朝日新聞 2024年1月11日 19時00分
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