https://news.yahoo.co.jp/articles/1a647755794da1f22f53c903cbfffcd869db3296
 ウクライナの防空兵器が14日、ロシア空軍の希少で貴重なベリエフA-50早期警戒管制機を撃墜し、イリューシンIl-22空中指揮機を損傷させた。
A-50の搭乗員15人は全員死亡したとみられ、犠牲者には高級将校も含まれる可能性がある。
ウクライナ空軍は戦果を公表した際に「誰の仕業?」ととぼけてみせている。
※略
上部にレーダーを搭載した4発機のA-50をウクライナ軍がどうやって撃墜したのか、正確なところは不明だ。
ソ連やロシアの軍用機について多数の著作がある軍事アナリストのトム・クーパーは、こんな仮説を立てている。
ウクライナ軍のレーダー・ミサイル部隊がロシア軍機を罠に誘い込んだ──。

クーパーの仮説が正しければ、この罠は前日の13日に仕掛けられた。
この日、ウクライナ空軍機、おそらくはスホーイSu-24戦闘爆撃機が、ロシアの占領下にあるクリミア半島各地でロシア空軍の施設を空爆。
クーパーによると、複数のレーダーが破壊された。
※略
そこで、ロシア軍の指揮官たちは当然のこと、だが愚かなことをやった。
残り数少なくなっているA-50U(編集注:A-50の近代化版)は、ふだんはアゾフ海上空の南方面を飛行するが、
指揮官たちはクリミアの大半がレーダーでカバーされるように、うち1機にもっと北上することを命じた。
A-50の回転式レーダーは320kmほど先の航空機サイズの目標を探知できる。

A-50には、10人ほどの搭乗員を乗せた4発プロペラ機のIl-22が随伴する。
Il-22は無線通信の中継プラットフォームで、搭乗員は通信やデータ転送の処理を通じてA-50に欠けている能力を補い、A-50の搭乗員を支援する。

衛星画像やレーダーデータによれば、撃墜されたA-50の飛行経路で最も北の地点は、ロシアの占領下にあるアゾフ海北岸の都市ベルジャンシクの上空だったとみられる。
ベルジャンシクは前線から120kmほどしか離れていない。
この地点は、ウクライナ空軍が南部戦線に配備しているパトリオット(保有する全3基のうちの1基)の射程圏内だ。
ウクライナ側の計略は、ロシア側に事前にほとんど察知されずに、また貴重なパトリオットも犠牲にせず、A-50とIl-22を仕留めることだった。

■撃墜はS-300とパトリオットの「連携プレー」だった可能性も
「ウクライナ側がやるべきことはただ、2機を遠距離から狙うのに適したSAM(地対空ミサイル)システムを密かに配備することだった」とクーパーは記している。
「それはS-300SAMシステムだったかもしれないし、PAC-2/3SAMシステムだったかもしれない」
あるいは「PAC-2/3システムの発射機、レーダー、電源車と、S-300のレーダーを組み合わせて配備した可能性」もあるという。

実際、攻撃はS-300とパトリオットの合せ技だったことをうかがわせる形跡がある。
A-50とIl-22が攻撃される数分前、ロシア空軍のスホーイSu-34戦闘爆撃機が、
それまで知られていなかったウクライナ軍のS-300のレーダーから発射された電波を検知していたと報告されている。

もしS-300が最初にレーダーを照射したのであれば、近くに潜むパトリオットに目標の航跡を伝達したに違いない。
「後者(パトリオット)はほんの数秒間レーダーを作動させた。これはパトリオットが目標に関するデータを取得するには十分長かったが、
ロシア側がその電波発射を検知し、脅威と判断するには短すぎた」とクーパーは論じている。
※略
今回の撃墜によって、ロシア空軍が使えるA-50は残りわずか2機になった可能性がある。
ほかに6機あるものの、いずれも改良や全面改修が必要と伝えられる。
ロシア空軍は最後の2機を危険にさらすのをいとわないのでなければ、クリミア全域のレーダーによるカバーは
もはや不可能になったという新たな事態と折り合いをつけねばならない。
言い換えれば、ロシア軍は今後、クリミア駐留部隊に対するウクライナ軍のミサイル攻撃が続く、いや、さらに激しくなる危険を受け入れなくてはならないということだ。
※略

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