東洋ゴム免震偽装巡る株主代表訴訟、元役員に賠償命令 - 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF11D6C0R10C24A1000000/

2024年1月26日 13:37 (2024年1月26日 15:37更新)

東洋ゴム工業(現TOYO TIRE)による免震ゴム性能の偽装事件に絡み、関西在住の個人株主の男性が原告となり、同社の山本卓司元社長ら当時の役員4人に対し、総額4億円を同社に賠償するよう求めた株主代表訴訟の判決が26日、大阪地裁であった。

谷村武則裁判長は原告の請求を一部認め、免震ゴムを製造する部門の事業本部長だった元常務執行役員の新庄治宏氏と品質管理を統括していた伊藤和行・元常務執行役員に約1億3800万円を、山本元社長と問題発覚時に社内のリスク管理を担っていた久世哲也・元代表取締役専務執行役員を含む4人全員に連帯して2000万円を賠償するよう命じた。

判決を受け、TOYO TIREは「元取締役の責任が認められたことは会社として重く受け止めている。経営体制を刷新し、ガバナンス強化・コンプライアンス遵守に取り組んでおり、引き続き徹底を図る」とするコメントを出した。

訴状などによると、同社子会社の東洋ゴム化工品(兵庫県稲美町)が2000~15年、国の基準に適合しない免震ゴムを出荷。当時の東洋ゴムの役員らが善管注意義務に違反し会社に損害を与えたなどとしている。

原告側によると、山本元社長ら4人は14年9月、一度は出荷中止や国への報告、事実の公表を決定したにもかかわらず判断を覆して出荷を継続。監督官庁への速やかな報告や公表を怠ったなどとして、TOYO TIREに損害賠償するように求め、16年7月に提訴した。

役員らは当時、社員に意見を求め、「問題無い」との見解を信頼したと反論。善管注意義務違反には当たらないと反論していた。

原告側は当初、同社で07年に発覚した断熱パネルの性能偽装問題について同年以降の歴代役員16人が、社内の隠蔽体質や法令順守の意識の低さを指摘されたにもかかわらず、内部統制システム構築の不備を放置して免震ゴムの不正を防げなかったなどとして、総額24億円を同社に支払うよう求めていた。

その後、争点が多岐にわたるために立証が困難として、責任追及の内容を絞って審理を進めることを優先。22年秋までに12人に対する訴えを取り下げた。

事件を巡っては、大阪府警が17年3月、不正競争防止法違反(虚偽表示)容疑で東洋ゴムや東洋ゴム化工品の元社長ら18人と法人としての2社を書類送検。大阪地検特捜部は東洋ゴム化工品のみを起訴し、枚方簡裁が同年12月、「免震構造物への不信・不満をまん延させた影響は大きい」などとして、求刑通り罰金1千万円を言い渡した。

一連の問題では、全国154棟のマンションなどで性能不足の製品約2900基が納入されていたことが判明し、今も交換作業が続いている。TOYO TIREは24年1月時点で、このうち153棟で免震ゴム製品の交換・改修工事に着工しており、151棟の交換を完了したとしている。