能登半島地震では揺れによる建物の倒壊だけでなく火災も相次ぎ、専門家の調査で火災の発生率が東日本大震災を上回っていたことが分かりました。専門家は今後発生すると指摘されている巨大地震や津波に伴う津波火災の想定を避難などの計画に早急に盛り込む必要があるとしています。

今回の能登半島地震について京都大学防災研究所で28日、報告会が開かれ、京都大学防災研究所の西野智研准教授は火災の状況についての調査結果を説明しました。

それによりますと石川と富山、新潟の3県で17件の火災が発生し、このうち広範囲で建物が延焼した石川県輪島市の「朝市通り」周辺など地震の揺れが原因とみられるものが13件、津波によるものとみられるのが3件確認されたとしています。

輪島市の朝市通り周辺では燃えにくい鉄筋コンクリートなどの建物でも、窓や扉などの開口部から燃え移り延焼を阻止できなかった可能性があったと指摘しました。

また、強い揺れとなった地域の火災の発生率は人口1万人当たり1件と試算され、1995年の阪神・淡路大震災と比べるとおよそ3分の1と低かった一方、2011年の東日本大震災の5倍ほどだったということです。

さらに石川県珠洲市と能登町で発生した津波による火災の面積はあわせておよそ0.37ヘクタールだったということです。

津波で壊された建物が流され、壊れていない建物と重なった場所で火災が発生していたことも分かり、東日本大震災での火災の特徴と似ているとしています。

西野准教授は今後発生すると指摘されている巨大地震・津波でも火災が想定されていることを踏まえ、感震ブレーカーなど出火防止の対策をさらに進めるとともに、津波による火災が起きた際の避難について防災計画に盛り込む必要があると指摘しています。

1月1日に発生した能登半島地震について京都大学防災研究所の浅野公之准教授らのグループは観測された地震計の波形データを詳細に分析し、断層がどのようにずれ動いたのか推定しました。

それによりますと、1日の午後4時10分9秒に南西の方向へ向かって断層の破壊が始まり、それから13秒後の午後4時10分22秒には別の断層で北東の方向へ破壊が進み、強い揺れを発生させていました。

複数の断層が連動してずれ動いたことで揺れが長い時間にわたって続き、震度6強を観測した石川県珠洲市では異なる方向へと進んだ断層の破壊の中間地点付近にあったため、強い揺れが1分以上にわたって継続していたということです。

珠洲市では去年5月の地震でも震度6強を観測していますが、強い揺れの継続時間はこのときはおよそ10秒程度で、今回はそれと比べ大幅に長かったと見られると指摘しています。

浅野准教授は「波形の分析から揺れの時間の長さなど震度だけではわからないことが見えてきた。地震による強い揺れの予測につなげるためにも、メカニズムの解明を進める必要がある」と話していました。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240128/k10014338471000.html