全国の航空自衛隊員が使用する業務システムが昨年12月に刷新されて以降、ネットワークの接続不良や頻繁なフリーズなどの不具合が断続的に発生し、業務に支障が出ていることが、防衛省関係者への取材で判明した。空自は毎日新聞の取材に不具合の発生を認め、早期解消に向けて航空幕僚監部を中心としたフォローアップチームを発足させたことを明らかにした。

 不具合が起きているのは「航空自衛隊クラウドシステム」。全国約4万人超の隊員がネットワークを通じて各種文書の作成やデータの保存、メールのやり取り、オンライン会議の開催など、さまざまな日常業務に活用している。

 空自によると、サイバー脅威に対応するために民間企業3社と契約し、昨年12月に各種プログラムなどの換装(取り換え)を全国一斉に実施した。総事業費は約720億円。

 同省関係者によると、システムを換装した後、接続不良やフリーズなどが各地で発生。パソコンで文書が作成できず手書きで代替する▽書類がスムーズに印刷できない▽システム上で行う申請手続きが進まない――など、業務に支障が出ている。空自は影響の範囲を明示していないが、「影響は全国規模」という見方もある。

 こうした不具合に現場からは悲鳴が上がっている。ある隊員は「能登半島地震の災害派遣活動でも既存のフォーマットが使えず、文書作成に以前の倍以上の時間がかかり、超過勤務も生じている。不具合のしわ寄せを被災者に及ぼすわけにはいかないとの思いで耐えている」と語る。

 外付けハードディスクにデータが保存されている東日本大震災での活動経験を踏まえた教訓や手引の使用申請許可も進まず、「教訓が利用できず、状況判断に迷うことがある。判断に問題があった場合、個人の責任にされてしまうのが怖い」という声も漏れる。

 空自は取材に「換装に当たって可能な限り不具合が生じないようにしてきたが、一部で改善を要する事項が確認されているのは事実。部隊の事務的業務に一定の影響を及ぼしていることは誠に遺憾」としているが、不具合の原因は明らかにしていない。能登半島地震での災害派遣活動を含む部隊行動や任務遂行については「影響はない」としている。【松浦吉剛】

毎日新聞 2024/2/3 05:00
https://mainichi.jp/articles/20240202/k00/00m/040/250000c