自民党派閥の政治資金パーティーの裏金事件で、所属議員の大半が還流を受けていた安倍派(清和政策研究会)。派閥の解散は決まったが、実態解明や再発防止という課題は残ったままだ。
事件の渦中にあった所属議員らは、政治改革の在り方についてどう考えているのか。東京新聞は、安倍派所属の99議員(1月1日現在)にアンケートを行った。
ただし、回答があったのは、所属議員99人のうち1割(12人)だけ。どこまで本気で国民の信頼回復を目指そうとしているのだろうか。(三輪喜人、福岡範行、小寺香菜子、中根政人)
アンケートの実施方法 1月23日に各議員事務所に手渡しやメール、郵送、ファクスで配布した。池田佳隆衆院議員(政治資金規正法違反の罪で逮捕、起訴)は地元事務所に問い合わせても連絡が取れず、過去にやり取りのあった自宅とされる宛先に郵送したが、受取人が居住していないとして返送されてきた。

◆9割が無回答
アンケートでは、今国会で焦点となっている連座制導入や政策活動費・調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の使途公開、企業・団体献金の禁止の是非などについて見解を求めた。
2018〜22年の5年間で、派閥からパーティー収入の還流を受けた額や使い道も尋ねた。
所属議員99人のうち、回答のあった議員の中には、岸田文雄首相が言及を避けている連座制の導入や政策活動費の公開に賛同する意見もあった。
◆問題発覚後に更迭された2大臣は回答
回答議員の中には、裏金事件発覚後の昨年12月に事実上、更迭された宮下一郎前農相と鈴木淳司前総務相もいた。
宮下氏は連座制導入や、政策活動費や旧文通費の公開について、いずれも賛成と答えていた。
連座制は、政治資金規正法違反があった場合、会計責任者だけでなく議員も処罰できるとするもので公明党や野党各党が法改正を求めている。受け取った議員に収支報告書への記載義務がない政策活動費についても、野党が廃止や禁止を訴えている。
政策活動費(略)

鈴木氏は還流額が60万円だったとし、「事務所内に全額を保管。一切手をつけていません」と回答。政治改革や派閥に関する質問には答えなかった。
ほかに回答したのは、衆院議員では衛藤征士郎氏、大西英男氏、小森卓郎氏、塩崎彰久氏、柴山昌彦氏、松島みどり氏、宮沢博行氏、参院議員では白坂亜紀氏、衛藤晟一氏、石井正弘氏だった。
企業・団体献金の全面禁止については、どの議員も「反対」と答えた。
◆還流分「人件費」「懇談の費用に」
派閥からパーティー券販売のノルマ超過分について還流などを受けていたと認めたのは、12人のうち5人いた。
衛藤晟一氏は不記載があったと答えたが、「誤記載だった」としている。柴山氏は「派閥側と協議中」という。
還流額が最も多かったのは、衛藤征士郎氏の1070万円だった。
不記載分の収入の使い道について、衛藤征士郎氏は「事務所経費、人件費等」と回答。宮沢氏は「他団体の会費や、懇談・会合の費用」としている。小森氏は「使用しないまま事務所で保管」、石井氏も「別口座を開設して、東京事務所において分離して保管し、現在まで一切費消していない」としている。
◆「5人衆」も、刷新本部役員も、高額議員も
今回のアンケートでは、自民党安倍派の幹部で立件されなかった松野博一前官房長官、高木毅前国対委員長、西村康稔前経済産業相、世耕弘成前参院幹事長、萩生田光一前政調会長の「5人組」や塩谷立元文部科学相、下村博文元政調会長からの回答はなかった。
7人はそれぞれ、会見の場で反省の言葉は口にしていたが、再発防止に向けた法改正の具体策についてはほとんど聞こえてこない。今回のアンケートでも態度を明らかにすることはなかった。
再発防止のため、党が設置した「政治刷新本部」で、安倍派から役員に選ばれた岡田直樹・前地方創生担当相や松川るい氏ら10人からも回答はなかった。
安倍派が訂正した政治資金収支報告書によると、2020〜22年の3年間で派閥からの還流額が多かった上位10人のうち、回答があったのは衛藤征士郎氏のみだった。
◆「改革へのエネルギー、感じない」
1月26日に自民党が決定した政治改革に関する中間取りまとめでは、政治資金規正法改正などの制度改革については「必要な法整備を速やかに行う」として、具体案は示されなかった。岸田文雄首相は国会答弁で「各党と真摯(しんし)に協議する」との言葉を繰り返すばかりだ。
麗沢大の川上和久教授(政治心理学)は、首相や安倍派議員を含む自民党全体の姿勢について「まず国民に説明することが政治改革のスタート地点だ。事件を教訓に、改革に乗り出そうというエネルギーが感じられない」と批判する。
裏金事件を巡る安倍派の状況(略)

東京新聞 2024年2月5日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/307249