今年も節分(3日)には、スーパーやコンビニの店頭に恵方巻きが並んだ。近年は売れ残りが問題になっているが、5年前に施行された食品ロス削減推進法などに基づき、国や企業は対策に乗り出している。効果は上がっているのか。(森本智之)

◆生鮮品材料、日持ちせず問題に
 恵方巻きは2000年前後にコンビニのキャンペーンにより節分の風物詩として定着した。ただ、材料に生鮮食品を用いるため、クリスマスケーキやウナギなど他の季節商品と比べて、消費期限が短くて日持ちせず、大量廃棄が問題になった。
 農林水産省は食品ロス削減推進法が施行された19年以降、小売企業などにロスを減らすよう啓発活動を続けている。呼びかけに応じて取り組みに参加する企業は今年、99社にのぼった。対策の中心は、予約販売だ。担当者は「啓発はだいぶ浸透してきたのではないか」と胸を張る。
 だが、肝心の廃棄の量が減っているのかどうかについては統計がなく把握できていない。
◆売れ残り目立つコンビニ
 食品ロス問題に詳しいジャーナリストの井出留美さんは19年から毎年どれくらい恵方巻きが売れ残っているのか、小売店舗を調査してきた。「法施行以前と比べ、廃棄する量は減ってきているが限界がある」と言う。
 これまでの調査では、小売りの中でもスーパーは、閉店までに「半額」など積極的に値下げをしたりして売り切ることを目指す店が多かったのに対し、コンビニは売れ残りが目立った。
◆「当日販売の仕入れは過剰」
 このため、今年の調査はコンビニに絞り、2月3日夜から4日未明にかけて、東京、大阪など関東、中部、関西の7都府県101店舗で行った。結果、売れ残り総数は1750本。さらにデータを分析中だが、ここから全国の売れ残り本数を推計すると、現段階の概算で96万本になるという。
 井出さんは「コンビニ各社は対策として予約販売を取り入れているが、現状ではパフォーマンスに過ぎない」と厳しく指摘する。今年の調査ではコンビニの小さな商品棚に88本も残っている店もあった。「どう考えても、現在のコンビニの当日販売の仕入れは過剰だ。本当にロスをなくすなら売り切らなければいけない。『もし売り切れた後でお客さんが来たら、売り上げを逃してしまう』という考え方を変えて、当日販売のための仕入れを減らさない限り、ロスはなくならない」と企業側に注文を付ける。
◆フランスは廃棄に罰金、イタリアはロス防止で税優遇
 井出さんによると、フランスでは一定規模以上のスーパーが売れ残り食品を廃棄すると罰金が科される。逆にイタリアでは、食品ロスを防ぐと税制優遇などのメリットを得られるという。日本の食品ロス削減推進法にはこうした規定はなく「日本でも捨てたら損をする、捨てなかったら得をするという制度を取り入れるべきだ。特に巨大なバイイングパワーを持つ小売業には必要」と提案する。
 59のフードバンク団体が加盟し、食品ロスの削減も活動目標に掲げる「全国フードバンク推進協議会」の米山広明代表理事は「恵方巻きは消費期限が早いので寄付を受けることはないが、恵方巻きの大量廃棄を通じて、食品ロスに対する社会の意識は高まったと思う」と指摘した後、こう続けた。
 「企業は消費者や社会の目を強く意識している。『食品ロスは良くないことだ』という理解がより広まれば、企業の意識も高まることにつながる。消費者、市民の意識は非常に重要です」

東京新聞 2024年2月6日 12時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/307555