https://forbesjapan.com/articles/detail/68982
 ウクライナ東部で先週、ロシア軍のT-72戦車2両が出撃時に衝突するというとんだ失態を演じ、
日々、極度の緊張にさらされ続けているウクライナ兵たちをちょっとばかり和ませた。

だが、それにとどまらない。
この出来事は、ロシアがウクライナで戦争を拡大後、23カ月あまりの間に被った30万人を超える兵力損耗の補いに苦慮するなか、
ロシア軍の訓練の水準がますます下がっていることの表れでもある。

この攻撃自体も失敗に終わり、エストニア出身の軍事ブロガーのWarTranslated(@wartranslated)が引用・翻訳しているところによれば、
ロシアのある軍事ブロガーは「愚かさと無能ぶりの極み」だと嘆息している。

これらの戦車は1月30日、ウクライナ東部ドネツク州ノボミハイリウカ村のウクライナ軍守備隊に対する攻撃に参加していた。
ノボミハイリウカはロシア軍が支配するドネツク市から西へ15kmほどに位置する。
ロシア軍の中隊規模の攻撃部隊は3両のT-72のほか、MT-LB装甲牽引車7両やBMP-2歩兵戦闘車1両から成っていた。
所属先は第20親衛自動車化狙撃師団かもしれない。

T-72同士が衝突したのは攻撃に向かう時だった。前線から数kmのあたりで2両がぶつかり、1両が走行不能になった。
出ばなをくじかれながらも残りの車両は攻撃を続行する。
だが、ウクライナ軍の第79独立空中強襲旅団や第7レンジャー大隊とみられる部隊から、大砲や対戦車ミサイル、
爆薬を積んだFPV(1人称視点)ドローン(無人機)による攻撃を浴びせられた。

ロシア側のジャミング(電波妨害)装置は機能しなかったらしく、これらの車両は遠隔操作のドローンに対してほぼ無防備の状態に置かれた。
車両はことごとく攻撃を食らう。走行不能に陥っていた46t、3人乗りのT-72もFPVの体当たりを受けて爆破された。
ロシア軍の最新の悲喜劇を締めくくる荒々しいコーダだった。

T-72は、攻撃部隊の半数ほどが弧を描く奇妙な機動をする途中で衝突している。どうやら乗員の少なくとも1人が方向を見失ったようだ。
ウクライナ側のドローンが上空から監視するなか、2両はゆっくりと互いのほうに近づいていってぶつかる。
どちらの操縦士も相手側が見えていなかったのかもしれない。

操縦士らが状況を認識できなくなった理由はよくわからない。
ハッチを閉めて戦車内に閉じこもっていたため、分厚い透明のプリズム式の展望窓を通して以外、外界を見ることができなかったのかもしれない。
有能な軍隊が戦車の操縦士を訓練するときには、攻撃に際してはハッチを閉じるのはぎりぎりまで待つように教える。ソ連の軍隊でもそれが標準的だった。
米中央情報局(CIA)も冷戦初期の報告書で「戦車のハッチはできるだけ長く開けておくのが原則だ」と説明している。
「いうまでもなく、ハッチを閉じていると視界が制限されるので、操縦士も(外界が)よく見えなくなり、その結果、戦車の機動性が制限される」からだ。

だが、ロシア軍の「標準」は劣化している。より正確に言えば、それはそもそもしっかりしたものではなかった。
米シンクタンクのCNAは「ロシアがウクライナに侵攻してからすぐ、ロシアの地上軍は訓練やドクトリンどおりに動かないということが明らかになった」と昨年9月の報告書で指摘している。
「何よりもそれが明らかだったのは機動面だ」とCNAは続けている。
「キーウへのロシア軍の進撃は(2022年2〜3月に)停滞し、部隊は市街地で足止めされたり、狭い道路に誘導されたりした」

つまり、ロシア軍の訓練状態は2年前の時点でひどかったわけだが、今はそれよりもはるかにひどくなっている。
ロシア軍は破滅的な損害を出すなか、前線全体の戦力をどうにか維持するため、もともと不十分だった訓練をさらに短縮し、
兵士を準備不足のまま急いで前線に送り込んでいる。
ロシア軍では「経験不足の予備役や徴集兵がさらにウクライナ(の戦争)に動員され、消耗がさらに激しくなるにつれて、
(中略)訓練問題は悪化する可能性が高い」とCNAは結論づけている。

ロシアは準備のいっそう整っていない兵士を投入して、3年目の戦争を進めようとしている。その過程で、ロシア軍の機械化部隊による
今回のような悲喜劇がさらに増えることは容易に予想できる。


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★1:2024/02/06(火) 19:07:03.54