日銀の内田真一副総裁は8日、マイナス金利政策など大規模金融緩和策について、賃金と物価データなどを「丹念に点検」したうえで「修正を検討することになる」と述べた。マイナス金利解除後について「どんどん利上げをしていくようなパスは考えにくく、緩和的な金融環境を維持していくことになる」との認識も示した。

内田副総裁は奈良県内の経済界関係者らが参加する金融経済懇談会で講演した。マイナス金利政策の解除後の具体的な金融政策運営について発信するのは初めて。日銀が緩和からの転換を判断するうえで重視する2%物価目標の持続的・安定的実現の見通しについては「確度が少しずつ高まっている」と語った。



大規模緩和策の一環として実施してきた上場投資信託(ETF)などリスク資産の買い入れについて、緩和修正時に「やめるのが自然だ」と指摘。直近での買い入れは減っており、「(買い入れを)終了し、市場の価格形成に完全に委ねることとしても、市況への影響は大きくない」との認識を示した。

すでに買い入れた資産の処分については「時間をかけて検討していく必要がある」と述べるにとどめた。

日銀は2016年2月にマイナス金利政策を導入した。導入前の状況に戻すと仮定すればマイナス金利解除は「0.1%の利上げになる」(内田副総裁)とした。一方、物価上昇率の見通しは「2%を大きく上回っていく見通しにはなっていない」と説明したうえで、マイナス金利解除後も「極めて緩和的」な金融環境が「大きく変化することは想定していない」と述べた。

長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)については「廃止あるいは変更する場合、どのような形で国債買い入れのやり方を示すのがよいか、市況を踏まえ、その先の展開も予測して考える」と説いた。「市場の自由な金利形成をより尊重する方向」で見直すとの認識も示した。

政策修正の「タイミングがいつになるにせよ、不連続な動きが生じないよう、コミュニケーション、オペレーションの両面で工夫する必要がある」として市場との対話を重視する考えを強調した。

日銀が1月22−23日に開いた金融政策決定会合では、政策委員から「マイナス金利解除を含めた政策修正の要件は満たされつつある」など、異次元緩和からの転換に前向きな意見が相次いでいた。
日本経済新聞 2024年2月8日 10:49 (2024年2月8日 11:36更新)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB081290Y4A200C2000000/