https://www.tokyo-np.co.jp/article/308705
 ロシアによるウクライナへの侵攻開始から間もなく2年を迎える。
先進7カ国(G7)がロシアへの経済制裁を強めるのに歩調を合わせ、多くの外国企業が「脱ロシア」に踏み切った。
一方で事業を継続する企業は少なくなく、ロシアに多額の納税をしている日本たばこ産業(JT)の子会社は、ウクライナ政府から名指しで批判された。
日本企業とロシアの関係はどうなっているのか。

◆JTインターナショナル(JTI)とDMG森精機の子会社が
「JTIの(2020年度の)収益のうち36億ドル(当時の為替レートで約4000億円)が直接ロシアの国家予算に入った。
これは、ほぼ毎日ウクライナの都市を恐怖に陥れているミサイルを搭載したロシア戦闘機100機の費用に相当する」

昨年8月、ウクライナ国家汚職防止庁は、ロシアで事業を続けているJTの海外会社JTインターナショナル(JTI)を「戦争支援企業」のリストに加え、声明で強く非難した。
ウクライナ政府は、ロシアで事業を続け、納税などを通じて侵攻を支えているとみなした外国企業を「戦争支援企業」として名指しし、
ロシアでの事業の停止や撤退を迫っている。これまでに中国や米国企業を中心に約50社が指定され、日系企業では、JTIが初めてリスト入りした。
9月には工作機械メーカーのDMG森精機の子会社も指定された。

◆「最大の投資家で主要な納税者だ」
声明などによると、スイスに拠点を置くJTIは、ロシア国内でメビウスやキャメルなどのブランドを展開し、22年のたばこ市場のシェア(占有率)は首位の36.6%を占める。
過去20年間でロシアへの投資額は46億ドル(約6700億円)を超え、20年度の納税額はロシアの国家歳入の約1.4%に上ると指摘し、
ウクライナ政府は「最大の投資家で主要な納税者だ」と批判した。
※略
◆ロシア事業は「ドル箱」だから? 大株主の日本政府は
簡単に撤退できないのは、JTにとってロシア事業がグループ全体の営業利益の2割超を稼ぐ「ドル箱」である点が大きいとみられる。
しかし、ウクライナ支援の姿勢を鮮明にする日本を含めた西側の主要国がロシアへの経済制裁に踏み切る中、それに逆行するようなJTの姿勢について、
国会では批判も出ている。

日本維新の会の松沢成文参院議員は外交防衛委員会などで、日本政府がJTの株式の3分の1を所有する特殊会社であることを引き合いに、
「監督権限を持つ日本政府がJTをロシア事業から撤退させるべきだ」と批判。
1月にも記者会見を開き、「政府が撤退を指示しなければ、日本は『戦争支援国家』と国際的に非難されかねない」と改めて強調した。
ただ、鈴木俊一財務相は「JTは現状、国内外の制裁措置を順守している」とし、ロシア事業の撤退判断は
「民間株主が3分の2を占める上場企業として、自主的に対応していくべきもの」と述べ、政府として関与しない考えを示した。
※略
深刻なのはロシア政府に「妨害」されるケースだ。
G7などの経済制裁に対抗してロシアは、非友好国の企業の撤退を許可制にしたり、ロシアから撤退する企業の資産売却価格を評価額の半額以下に割り引くよう求めた。
さらに昨年3月からは、事業売却益の少なくとも10%をロシア政府に寄付するよう義務づける「撤退税」を導入し、24年からは15%に引き上げた。

先の飯島氏は「ルールがころころ変わるロシアリスクがあらわになった。ゴールポストを動かされ、外国企業はどんどん不利な状況に置かれて撤退に動きにくくなっている」と話す。
対抗措置が奏功してか、ロシアの成長率は侵攻前の水準に戻り、経済は堅調だ。
ニッセイ基礎研究所の高山武士氏は「経済制裁の影響は思ったより軽く、ロシアの経済力をそいで戦争を止めるという西側諸国の思惑は外れた」と指摘する。

◆「有事を想定した撤退計画を」
ロシア事業を巡っては、有事の際に非友好国の外国企業が撤退する難しさが明らかになった。
前出の久野教授は「今回の教訓は、今後の地政学リスクである『台湾有事』の備えに生かす必要がある」と説く。
「起きてほしくはないが、もし中国と西側諸国とのあいだで経済制裁の応酬に発展した場合、中国経済に依存する日本が被る痛手は対ロ制裁のときと比べものにならない」と懸念し、こう続ける。
「政府や業界団体とも連携し、各企業が有事を想定した撤退計画を立てておく必要がある。また販売先や調達先としての中国への過度な依存を避け、
サプライチェーン(供給網)を多元化させる余地がないか見直すことも重要だ」
※略

★1:2024/02/12(月) 19:39:17.08