https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-02-13/S8S9Z2T1UM0W00
→昨年10月以降に制裁対象となったタンカーの約半数、新たな積荷せず
→ロシア産原油取引からギリシャのタンカー船主の多くは手を引く

 ロシア産原油を運ぶタンカーの多くが、米国による制裁の重圧を受けて運航を停止している。
西側当局の制裁強化が目に見える効果を表し始めた兆候だ。

米財務省が昨年10月10日以降に制裁を科したタンカー50隻のうち、約半数が制裁対象となってから積み荷できていないことが、
ブルームバーグが一隻ごとに追跡した調査で明らかになった。
直近ではバルト海のロシアの港に向かっていたロシア海運最大手ソフコムフロートの原油タンカー「NSリーダー」が、
米国の制裁対象に指定された今月8日、ポルトガル沖で急きょ針路を変えて引き返した。

主要7カ国(G7)は2022年12月、ロシアの石油生産と石油収入を抑える目的で同国産原油の取引に1バレル=60ドルの上限価格を課し、さらに2カ月後には石油製品に対する上限価格も導入した。
だが、ロシアはこれを回避する方法を見いだし、上限を超える価格で取引されるロシア産原油取引への関与は禁止されているにもかかわらず
取引を継続する西側企業もあるなど、この制度は昨年厳しい批判にさらされた。

これに米国は制裁と上限価格違反の調査強化で対応した。
この措置で、ギリシャのタンカー船主の多くはロシア産原油の取引から手を引いた。

国際エネルギー機関(IEA)など複数の団体によると、その結果、ロシア産原油は運賃が高騰する一方、
国際的な指標原油に比べて一段と割安な価格で取引されているという。
ロシアのノバク・エネルギー相は、同国産の原油は安くなっていると述べた。

米財務省は数回に分けて制裁を科したため、一部のタンカーはいずれにしろ積み荷の段階に至っていなかった可能性もあり、状況はまだ断片的だ。
昨年10月上旬以降に制裁対象となったタンカー50隻のうち、18隻はこれまでに貨物を積載した。
このうち9隻は深海油田からくみ上げた原油を陸上の製油所にピストン輸送するシャトルタンカーで、9隻は通常通り委託貨物を集荷した様子だった。
また1隻は、制裁前に積み込んだ貨物を引き続き運んでいる。

  残る31隻のうち7隻は制裁前から待機状態にあり、3隻は貨物を近く積み込む可能性がある。
21隻は制裁対象となって以来、積み荷していない。

■米当局者は強気
輸出地点におけるロシア・ウラル原油の平均価格は、国際的な指標である北海ブレント原油の現物相場に対するディスカウントがますます広がっている。
米財務省のバンノストランド次官補代理(経済政策)は
「複数の独立機関、市場アナリスト、ロシア自身すらも、われわれの2つの目標を上限価格が達成しつつあるという事実を示唆している。
その2つとは、違法な戦争の継続にロシアが必要とするエネルギー収入を断つことと、同時にエネルギー市場の安定を推進することだ」と語った。

ロシアの貿易は公にされない性質のため、同国政府がどれほどの打撃を受けているのか確定は難しい。
ウラル原油はインドに到着すると、ブレント現物に対するディスカウントは縮小する。
輸出地点と輸入地点の価格には大きな差があり、この「デリバリースプレッド」で誰が利益を得ているのか明らかでない。
ロシア産ソコル原油のインドの顧客向け供給が止まっていることも、状況を複雑にする。
ソコル原油を巡っては、決済処理の問題が生じているとこれまでに報じられた。